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荷物を整えて部屋を出て、YHの受付脇のインフォメーション・ボードに張ってある、サイクリングルートマップとにらめっこする。今日、モンタレーに向かって走るルートの検討だ。経験上、大きな町を出るときは注意が必要である。広範囲な地図には町中の全ての道が載っているわけではないからなどの理由があると思うが、ルートを間違えたり、さんざん町行く人に道を尋ねた経験がいくつか有る。サン・フランシスコも例に漏れなかった。自分の持っているサンタ・クルズエリアの詳細な地図にサイクリング・ルートを書き写す。 |
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YHを出て、ダウンタウンの入り口にある、タコ・ベルに向かう。こちらに来て一度試してみたかった、ラテンアメリカ料理のファストフード店だ。この店で、ゆっくり朝食にしたかったが、YHを出るのが遅かったので、昼食用にテイクアウトにする。2種類のブリートを適当に注文し、お店の人が尋ねてくるオプションは、訳が分からないので、適当に答える。 店を出て、東に向かい、サン・ロレンゾ川を渡ってから、一本北側のスクエル街道に入る。この通りをひたすら東に向かい、キャピトラ・ロードに入れば、まっすぐにキャピトラの町に行くことが出来る。と思ったら、そのキャピトラ・ロードの入り口を通りすぎてしまったらしいことに気が付く。とにかく早々に右折しようと思い、当てずっぽうに右に曲がると、ここがキャピトラ・ロードだった。しかし、そんなはずはないと、よく地図と通りの名前を確認すると、キャピトラ・ロードではなく、キャピトラ・アベニューだった。とんでも無く紛らわしいが、ほんのちょっとの遠回りで済んだようで、助かった。YHで参考にした地図によると本来のサイクリングルートはもっと北を走っているが、何となくアップダウンが多そうなので、なるべく海岸線に近いルートを走ったのだった。 |
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キャピトラ・ロードは工事中の区間もあり、走りにくかったが、キャピトラの町に入ったあたりから道が広くなり、まっすぐ東西に伸び、路肩も広く快適な道になった。川に突き当たった感じで、斜め右に折れ、川沿いにぐぐっと高度を下げると、道上に鉄道の橋が見えてきた。脇に階段があるので、自転車を止めて、登ってみると、キャピトラの中心部や、海に流れ込む川などが見えて、なかなか良い景色だ。 キャピトラの中心部の繁華街は、小さくて、一瞬にして通り過ぎたが、明るくて、とてもかわいいイメージ。町の中心部は海に近い低いところにあって、町を出るとすぐに道は北に向かい、登りになる。鉄道を平面交差した直後に、右折して、シークリフというところを経由して、アプトス方面に向かうが、この区間は林の中を鉄道沿いに走り、右側に海も見えてきて、すこぶる気持ちがいい |
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道はついに州道1号線の脇に出た。サンタ・クルズまでずっと州道1号線を走ってきたわけだが、サンタ・クルズからは、自動車専用道の区間がかなり先まで延びていて、この辺はまさしく市街地を避けるための自動車用のバイパスになっている。そのためか、東に向かう一般道はこれといってメインの物はなく、かろうじて自動車専用区間の測道のような道しかない。仕方なくその測道を走るが、すぐ脇を高速で沢山の車が走っていて、とても静かなサイクリングとはいかない。そして、インターチェンジのようになった所に来ると、その測道は大きく迂回を迫られることになる。 アプトスの手前で、自転車ルートは、州道1号線の反対側に移るため、Z字状にコースを取る羽目になった。大きく脹らんでから、州道1号線と直角に交差し、他の道に合流して、測道状の道に戻るわけだ。合流した道は、先ほど途中で右折したスクエル街道だが、この通りはとても雰囲気が良くて、州道1号線の北側を走っているため敬遠したことを少々後悔しながら、アプトスの町に到着。鉄道と平行している部分は、開拓時代の西部をイメージさせる建物など有り、なかなか良い雰囲気だ。 |
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| 太平洋岸を貫く自転車ルート"PACIFIC COAST"を示す標識 |
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州道1号線と平行するルートから離れて、森の中を気持ちよく走っていると、いままでよく見かけた"BIKE ROUTE"という看板の下に、"PACIFIC ROUTE"と書かれているのを見かけた。海岸線を縦断するルートに指定されているようだ。 快調に下って、鉄道の橋脚を潜ると、いきなり視界が開け、太平洋岸に出た。ラ・シルバ・ビーチの看板があり、駐車場にベンチがいくつかあったので、ここぞと昼食にする。駐車場から、かなり下にあるビーチには階段で下りられるようになっている。ここはかなり広いビーチで、北の方を見ると、サンタ・クルズの町が見え、逆方向の彼方には今日の目的地モンタレーがあると思われる半島が見える。風が少々強いが、天気は良く、サーフィンや日光浴に来ている人も居て、車の出入りもそこそこある。もしかしたら、昼休みを利用してちょこっとサーフィンをやりに来ている人もいるのかも知れない。 昼食を済ませて、とても強い日差しの中走りはじめる。新調した眼鏡に付いていたサングラス・オプションの出番だ。ルートは海岸線からまた少々内陸に入り、ほどなく広々とした丘陵地帯に出た。一面の畑で、ちょうど収穫時期なのか、多くの人が刈り入れ作業をしている。と思ったとたん、プーンと甘い香りがしてくる。どんな作物を刈り入れているのか、近寄るまでもなくすぐに解った。イチゴの収穫時期なのだ。 |
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この付近の州道1号線は、まだ自動車専用で、自転車は通行不可のため、地図で紹介されているサイクリング・コースは少々複雑に州道1号線を避けるように進んでいる。それでも、道は多くないし、ちゃんと自転車のルートを示す標識が出ているので、順調に地図の指示通りに走ることが出来る。 やっと州道1号線が自転車通行不可の区間から出たようで、地図で示されたルートは州道1号線に合流した。今までの、イチゴ畑の中のんびりルートとは異なり、州道1号線は交通量は多いが、例によって路肩は広く走りやすい。今までのくねくねルートとは一転して、快調なペースで、直線的に距離を稼ぎ、今日のコースのほぼ中間地点と思える、モス・ランディングという港町に到着した。海に注いでいる川の橋をわったったあたりから港を見ると、沢山の漁船が停泊していて、かなりの規模の港であることが解る。 |
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| CastrovilleのBurger Kingにて休憩 |
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モス・ランディングを通過した後、地図上のサイクリング・ルートは、カストロビルの町を避けるように、州道1号線沿から離れるが、ロジャーさんのお勧めは、このカストロビルの町を抜けて、州道156号線沿いにあるサイクリング道路を使って、再び州道1号線沿いに戻るというルートだ。言われたとおりにカストロビルの町に入り、町を抜けきろうとしたあたりに、バーガー・キングがあったので、一服することにする。土地柄か、スペイン語が飛び交う中、セット物をオーダーして、巨大なドリンクカップを受け取って、好きな飲み物を自分で注いで、席について一服。地図を見ながら、この先、また少々複雑になるルートを確認しながらである。 バーガー・キングを出て、州道156号線を越えて、標識に従って、すぐに右折して、先を見ると、車道としては行き止まりのようになっていて、この先は自転車専用道であることが解る。太陽電池を使った充電器を後ろのザックにくくりつけているが、今日はとても日差しが強いので、しっかり充電が進んでいることだろう。 この自動車が行き止まりの場所で、駐車した車から自転車を下ろして、走り出そうとしている若い男女がいた。写真など撮っているうちに彼らは先に走って行ってしまったが、すぐに追いついて、軽く挨拶をして先を急ぐ。隣の自動車専用道路の自動車がうるさい以外は、とても良い自転車専用道だ。 |
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| Seasideの池にはいろいろな鳥たちが羽を休める |
| | Marinaにある日系人の名前の付いた"GEORGE J.TAKAHASHI BICYCLE PATH" |
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| 快適この上ない海沿いのSeasideの湾岸サイクリングロード |
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州道156号線が州道1号線と合流したところで、自転車専用道は終わり、州道1号線沿いの一般道を走る。この辺はあまり走りやすいルートとは言い難いが、数キロで、一般道の脇に自転車専用道路がある区間に入る。この区間は地図には自転車専用道路の記述になっていないので、新しいルートなのだろうか。とても走りやすい。 遠くにやまなみが見えるだけで、殺風景な景色の中をずっと走っていたが、いつの間にか、家並みが増えてきた。マリーナという町のようだ。"GEORGE J.TAKAHASHI BICYCLE PATH"と、日系人の名前の付いた看板が目に入った。町を越えて、繋がっている自転車専用道路も、それぞれの町でいろんな人が作った物が繋がっているのだろう。 地図では、ここからモンタレーまでは町が繋がっていて、自転車専用道路がずっと海岸線を通っているので、もうモンタレーまではもう少しだ。しかし、そう思い始めてからが、とても長く感じた。マリーナを過ぎて、新たに現れる町の名前は、モンタレーではなく、行けども行けどもモンタレーに到着しない。モンタレーの手前のシーサイドという町で一時自転車専用道路がとぎれたのを機に、道の脇の池のある公園で休憩。水鳥が多種多数いて、和む風景だ。 シーサイドを抜け、ルートは再び自転車専用道路になり、快調に走る。通勤の帰りか、仕事の後のトレーニングか、ロードレーサータイプの自転車で快走する人が増えてきた。みな、レーサージャージでばっちり決めて走っている。ジョギングしている人も何人か見かけたが、市街地から近い海沿いに、これだけまとまった距離の自転車専用道路があるというのはうらやましい限りだ。 |
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ついにモンタレーの町に入ったのか、交差する道が増えて、散歩などする人が多くなってきた。そして、港が見えるところに来ると、自転車専用道路は駐車場を迂回するなどして、くねくね曲がるようになり、走行スピードが落ちてきた。看板が多くなり、明らかに観光地とわかる区間に入ると、周辺は公園のように整備されていて、とても美しい。 キャナリー・ロウと呼ばれる、以前缶詰工場が沢山あった一帯が再開発されて観光地になった区間にさしかかると、もうYHは近いはずだ。YHの有る通りは、自転車専用道路と平行に3本ほど内陸に入った通りにあるはずだ。気持ちよく走っていて、もう隣の町との境目まで来てしまって、数ブロック通り過ぎてしまった事に気が付く。少々登って、内陸に向かい、目的の通りにはいると、すぐにモンタレーのYHを見つけることが出来た。受付で2泊分の料金を支払い、自転車と荷物を地下の部屋に運び入れて、一服する。本当に今日はよく走ったので、足が疲れている。 このYHは、モンタレーの中心部からは離れているが、観光ポイントであるキャナリー・ロウから本当に近いところにあり便利だ。広い部屋が2個有り、男女相部屋である。1階には立派なラウンジがある。モンタレーは水源の確保が大変なのか、水道代の節約なのか、シャワーの水は使い放題ではなく、2トークンで数分しか流れないし、トイレや洗面所の水道も、水を無駄に消費できない仕組みになっている。 モンタレーは海沿いの町でYHの周辺にも日本食の店がいくつか有るようなので、散歩がてらに歩いて食事に出る。結局、日本食ではなく、YHに近いところに大きなピザ・レストランがあったので入り、Smallというサイズの物を適当に注文する。バーでビールを別途購入し、席で飲んで待っていると、巨大なピザが出てきた。なんとかやっつけて気持ちよくYHに戻る。 |