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今日、サン・フランシスコでは、"Bike to Work Day"(自転車通勤の日)というイベントのある日だ。具体的にどのようなイベントが行われるかわからないが、主催しているSFBC(サン・フランシスコ自転車連盟)のオフィスに行くべく、住所を確認する。マーケット通り沿いにあるオフィスのようだが、番地だけではどのあたりかよくわからない。とにかくSFBCは日本の自転車仲間のEさんからも行ってみると良いと言われているので、訪問してみたい。 眼科医に予約を入れる。9時に予約をしたが、混んでいないのか、適当に来てくれればよいと言う感じだった。出発準備をしている間にもう9時だ。いそいでYHを出て、マーケット通りにある眼鏡屋を目指す。 |
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ちょっと遅れて眼鏡屋の奥にある眼科医に到着。自転車は畳んで、受付の脇まで持ってゆく。東洋系の看護婦さんから早速声がかかり、アンケートのようなものに記入。時間をかけて、電子辞書片手に書き込む。 検診の内容は今まで日本で受けた物より充実した物で、見たこともない機器で、やったこともない検査をいろいろ行った。検査結果は、現在使っている眼鏡の度数とほぼ変わらず、乱視も無しとのこと。目が疲れるという状況も、近視以外の要因はないようだ。 検査料金を支払い、検査結果を持って、手前の眼鏡店に行くと、昨日の眼鏡フレームを出してきて、レンズの種類などを決めてゆく。今はほとんどがプラスチックレンズだということは知っていたが、私は使うのが初めてだ。コーティングの種類など選んで、1時間後に出来るとのことなので、それまでビジター・インフォメーションにでも行こうと思い、外に出る。 |
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| San FranciscoのVisitor Information Center |
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マーケット通りを南西に向かい、ケーブル・カーの折り返し地点の付近の地下にビジター・インフォメーションは有った。自転車を折り畳んで中に入ると、さすがサン・フランシスコという規模。沢山のフリーのパンフレットがきちんと整理されて置かれてあり、WWWをアクセスするための端末もある。YHにあるのと同じ物だ。そして、何でも相談できるという感じでカウンターがあり、5人ぐらいの係員がいて観光客の対応をしている。見た目にも良くできた観光地図があったので、購入することにする。これから行く予定のフィッシャーマンズ・ワーフと、ヨセミテ国立公園だ。一昨日行ったゴールデン・ゲートパークの地図も合わせて購入し、外に出る。 |
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食事は手っ取り早くファスト・フード。今度は最初に利用した隣にあるバーガーキングだ。適当に朝食のセット物を頼んで、お腹を脹らませる。食事の後、パロアルトにある自転車店ワッソンに電話をする。5年ほど前にこの店から愛車Bromptonを個人輸入したのだ。店主のチャネルさんとには、以前より訪問したい旨を電子メールで伝えていたが、近くに来たら電話をくれと言うことで、連絡をした。明日の午前中に行くと伝える。 |
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眼鏡屋に戻り、自転車を畳んで店の中に入れようとすると、ちょっと薄汚れた実用車のようなカゴ付きの自転車が店の中に置かれていて、その脇に愛車を置き、カウンターにて完成した眼鏡を実際にかけてみて、店の人につるの曲がりや、たびの角度を調整してもらい、ケースやら、おまけやらをもらって、支払いを済ませる。 実用車の持ち主と思われるスーツ姿の男性が私の自転車を見つけて私に声をかけてきた。Bromptonのことは知っているらしく、何段変速のモデルか、などと聞いてくる。私も、良く見ると実用車としては魅力的な最新の日本メーカー製部品の付いているので、パーツについてあれこれ質問したりする。彼は自転車通勤者なので、今日のイベントのことも知っているかもしれない。そして、SFBCのオフィスの場所なども知っている可能性はあると思い、唐突に、これからSFBCに行ってみたいが場所は何処かと訪ねると、名刺を1枚差し出し、この住所だという。なんと彼が差し出した名刺を見ると、なんとこの人デーブ・スナイダーという人で、そのSFBCのスタッフ。おまけにEXECUTIVE DIRECTORという肩書き。2人で偶然の出来事に驚く。今日のイベントについて尋ねると、朝の通勤時間帯にほとんどのイベントが終わってしまったが、夜にパーティーがあるから参加しないかという。もちろん参加すると返事し、事務所の建物の特徴などを教えてもらって別れた。眼鏡店の人も、我々に不思議な出会いの一部始終を見ていたようで、びっくりしていた。 |
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| SFBC(San Francisco Bicycle Coalitionサンフランシスコ自転車連盟)のオフィス内 |
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建物に書かれた番地を順番に追いかけながら、マーケット通りをひたすら南西に走る。SFBCのオフィスがあるビルはまだまだ先のようで、数字的にはずいぶん離れている。最初はしっかりした建物ばかりが並ぶマーケット通りだったが、この辺まで来ると、高い建物が少なくなり、昼間から酔っぱらいがうろついているようになり、ずいぶんイメージが違う。 番地的にはこの付近だろうと交差点で、道の反対側に渡り、周囲を見回すとそれらしい建物が見つかったので、自転車を畳んで建物に入る。SFBCはどのフロアーにあるのか、入り口の案内を見ていると、ビルの利用者が声をかけてきて、フロアーを教えてくれた。エレベーターで上がり、オフィスを訪ねると、先ほど有ったデーブがいて、いろいろ案内してくれ、スタッフにも紹介してくれた。SFBCの会員になり会員用のTシャツや書類を受け取り、おまけにステッカーなどもいただく。私にSFBCを紹介してくれたE氏は、去年バイクサマーというイベントに参加していて、スタッフはみな知っているようで、E氏の知人と言うことで、歓迎してくれた。 今日のイベントは終わったが、マーケット通りのある場所で、白いテントを設置して小物を売っているところがあるとのことで、行ってみることにする。 |
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| SFBC主催の自転車通勤を奨励する"Bike to Work Day"イベント |
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SFBCのオフィスを出て、教えてもらった方向に向かうと、眼鏡店よりも北東の位置に、コーヒー等をサービスして、Tシャツやキャップを売るSFBCの白テントを発見。自転車に乗る人乗らない人、行き交う人に声をかけて、自転車通勤の啓蒙活動をやっている。 テントに近づくと、スタッフの一人の女性が声をかけてきた。E氏の友達かというのでそうだと答えると、彼女は、E氏がバイクサマーの時にお世話になったという、ナンシーさんでした。E氏は私がサン・フランシスコ周辺をBromptonで走るということを彼女に電子メールで伝えてくれていたので、市内でBromptonで走っている私を見て、もしかしたら彼がそうではないのかと、ご主人のMikeさんと話していたとのこと。 |
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| BART駅にも沢山貼ってある"Bike to Work Day"のポスター |
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白テントとナンシーさんらスタッフに別れを告げて、バークリーに行くべく、地下鉄の駅を探すと、すぐ近くにモンゴメリー・ストリート駅の入り口があった。「BART」というサインが出ているのですぐわかる。自転車を畳んで、階段を下り、バークリーまでの運賃を確認し、自動販売機と格闘しながら、チケットを買い、自動改札を抜けて、ホームに降りる。ホームには、"Bike to Work Day"のポスターが沢山貼られており、協賛団体を見ると、このBARTまで巻き込んだかなり大がかりなイベントであることがうかがわれる。このベイエリアでは自転車利用が市民権を得ていることがよくわかる。 |
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| BART Berkeley駅の改札の内側にある自転車預かり所兼ショップ |
| | Berkeley駅前にあるMacintosh専門店 |
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このBARTという地下鉄は、ベイエリアの各地を広くを結んでいて、サン・フランシスコ市内から東に向かう路線は、行き先が4カ所に枝分かれしている。バークリーに行くのはリッチモンド行きの列車だ。いくつかの列車をやり過ごして、目的の行き先の列車がやっと来たので乗り込む。隣の駅のエンバーカデロ駅を過ぎると、サン・フランシスコ湾を潜る区間だ。それを過ぎると地下鉄は地上に顔を出し、また潜ったりしながら北上してゆくが、いくつかの駅を過ぎて、バークリー駅に到着した。 バークリー駅の改札を出て、地上に出る出口を探していると、改札の内側に自転車がたくさん置いてある所があった。興味を引く変わった自転車なども置いてあり、自転車店か、レンタサイクルの店かと思い、そこにいた人に尋ねると、自転車預かり所だという。自転車と共に改札に入り、そこに自転車を預けてから、ホームに降りて地下鉄に乗り込むという訳だ。 バークリー駅から地上に出ると、カリフォルニア大学バークリー校のある学生街バークリーの明るい街並みが目に飛び込んできた。燦々と輝くカリフォルニアの日差しの中、若い人々が歩いたり、自転車で行き交っている。すぐ目に付いたのが、愛用のパソコンMacintoshの専門店。UCB(カリフォルニア大学バークリー校)は、私の仕事の上では多大な影響を受けているUNIXが生まれた場所であり、ある意味で聖地のような所だ。もともとは電話会社の研究所で生まれたUNIXだが、このUCBの学生により洗練され、世界中の研究者に配られ、単なる利潤追求の文化とは相容れないコンピュータ文化が生成された。その中には、今のインターネットの発展に大きく貢献する技術が多々あったわけで、UCBが世界を変えるほどの影響を世界中に与えたと言っても良いだろう。 |
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| Berkeleyのラーメン屋にて昼食(塩ラーメンと炒飯,餃子のランチセット) |
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大学のキャンパスを見学するのは後回しにして、お腹が空いたので、昼食を食べようと思い、気軽に入れそうな寿司屋など探す。実家の近所の友人であり、以前この地に住んでいたK氏からも寿司屋の名前を聞いているが、探している内に日本にあるラーメン屋そのままの、菱和というラーメン屋があったので、自転車を畳んで入る。店内には、UCB留学生なのだろうか、日本人の若者のグループが何組か居て、日本人以外はほとんどいない。お店のスタッフも、ほとんどが日本人で、日本語が飛び交っている。塩ラーメンのランチセットを注文し、懐かしさをかみしめながら、汗をかきかき、一気に食べきった。 |
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ラーメン屋を出て、大学の敷地の外側にある学生会館のような所を覗いてから、K氏から情報収集のために立ち寄ることとアドバイスを受けている、自転車スタジオという自転車店に向かう。この店は、I氏という日本人が経営している自転車店で、周辺の自転車事情に詳しいということだ。K氏もバークリー在住中は、お世話になったとのこと。その店はUCBのすぐ脇の通り沿いにあるのだが、その通りは一方通行なので、一本離れた道を登り、UCBの正門前の通りであるテレグラフアベニューを経由して、目的の通りに入った。通りを下ってゆくと、かなり下ったところにその店があり、K氏からのメールで事前に私が来ることを知っていた、I氏とお会いすることが出来た。とにかくこのお店に置かれている自転車や部品達は魅力的なものばかりで、米国にありながら、欧州の自転車文化の香りがする。I氏は、性能を優先するあまり、優雅な味わいを失ってしまった自転車は面白くないと言い切る。皆がレースに出るわけではないのだから、全くその通りだ。 I氏からは、日本にいたときの自転車との関わり、自転車に対する姿勢や、地元の情報など、盛りだくさんの話をする。もう2時間話をしているが、お互いの話が尽きない。夜はSFBCのパーティーがあるので、残念だが切り上げることにする。また来ることを約束して店を出る。 |
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I氏からは、地図を入手するなら、途中で看板を見かけたThe Map Centerが良いと教わった。もう遅い時間なので、閉店しているだろうと思って寄ったが、まだ開いていて、パーティーの時間にまにあわないことを覚悟で店に入ってしまった。 とても親切な店員に、サイクリングに使う地形図を探していることを話すと、10万分の1の地形図を扱っていて、全てのエリアの在庫があるわけではないが、数日で取り寄せられるという。今回のサイクリングはスポーツ車ではないし、それほど込みいった場所を走るわけではないので、十分な縮尺だ。在庫のある2枚の地形図を購入し、残りの6枚を注文する。金曜の午後以降に受け取ることが出来るとのこと。他にどんな地図を既に入手したか見せてくれと言うので見せると、一つ一つの地図に対して評価を聞くことが出来た。ほとんどの地図をその店でも扱っているが、中には初めてみる物もあり、仕入れるとのことで、詳細をメモしていた。 |
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急いでUCB脇の通りを下り、バークリー駅に向かう。切符を買うが、SFBCのパーティー会場はどの駅が近いのかわからないので、お金を多めに入れて切符を買い、改札を通りホームに降りる。バークリー駅にはサン・フランシスコのダウンタン方面以外にベイエリアの南の方に向かう路線も通っている。路線図を見ると、たとえその列車に乗っても、2つ先の駅に行けば、別な方角から来てサン・フランシスコへ向かう列車に乗ることが出来る可能性もあるわけで、とにかく来た列車に乗ることにした。案の定フレモント行きが来たので躊躇無く乗り込む。 列車の中に書かれた緊急時の説明を見ると、自転車の項目もあり、畳まずに乗せることが出来ることがわかる。緊急時は通路を塞がないように放置して、人間だけ避難しろと言うようなことが書いてある。 |
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マックアーサー駅に着くと、ほぼ同時に平行した鉄路上を同じ方向に走ってくる列車があり、ホーム逆側に滑り込んだ。多くの人がその列車に乗り換えているし、ホームのアナウンスでもサン・フランシスコ等に行く人はこれに乗り換えろと言っているようだ。残念ながらこの地下鉄BARTの欠点は、列車の車体に行き先が表示されていないので、ホームから車体を見てもどこに行く列車か区別が付かないことだ。 |
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| BART駅のプラットフォームにMTBは日常的な風景 |
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結局、SFBCのパーティー会場であるカフェの正確な場所はわからないが、マーケット通り上にあることは住所で間違いない。番地的にはSFBCのオフィスよりずっと先だ。とりあえず、ずっと先に行くとマーケット通りからルートが外れてゆくので、良く知っているパウエルストリートあたりではないだろうから、一つ先の駅である、シビックセンター駅で降りることにする。 シビックセンター駅で自動改札を抜けると、入れた切符は回収されず、機会から吐き出された。きっとまだ残金があるからだろう。ということは、この切符は、多く金額を入れて買えば日本のJRのイオカードのような使い方も出来るということだ。1つの切符の種類で、目的地まできっちり買うことも出きるし、プリペイドカードのような使い方も出来るわけだ。自動券売機はどうりで、釣りがちゃんと出ないような仕組みになっていたわけだ。 |
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| SFBC主催パーティーでは土地柄こんな人も珍しくない |
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| SFBC主催のパーティー会場前駐車レーンを自転車が占拠 |
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マーケット通りに出てひたすら南西に自転車を走らせる。もう薄暗くなってきていて、建物に書かれた番地も見にくくなってきた。かなり走って、やっとSFBCのパーティー会場である、カフェ・ド・ノードを発見。店の前の自動車の駐車スペースを占拠して自転車が大量に止まっているのですぐわかった。 自転車を畳んで持って階段を下ってゆくと、正面でパーティー会費を徴収している。会員は$5なので、会員証を見せて$5支払う。良く見ると寄付と書いてあるので、厳密にはパーティー会費ではないのかもしれない。そもそも$5では安すぎるし、実際にビールなどの飲み物は、カウンターに行って自前で買わなければならないのだから。実際は、お店を連盟で借り上げただけと言う感じなのだろう。まあ、現実的なやり方だ。 店の中は人が多くごみごみ状態。昼間会ったナンシーと会い、旦那さんのマイクを紹介してもらった。デーブも見かけた。パーティーのチラシに登場している女装した男性も、チラシの婦人車と共に参加している。他にも女装している人は何人かみかけたが、こういう人達がいるのはゲイの文化が市民権を得ているサン・フランシスコならではなのだろうか。 遅れてきたので、パーティーのメインの行事は終わっているようで、SFBCのマークが掲げられたメインの部屋に行くともう片づけが始まっていた。遅れてきたことを後悔したが、知り合いも増えたし、遅くまで飲んでいるサイクリストからこれからサイクリングに行く場所の情報を聞き出せたり、ハイテク産業の不景気状態に苦悩する同業者と話が出来たりしたので、遅れても来た価値はあったと言うことだ。 |
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もう11時近い。ナンシーとマイクの夫妻は帰っていったし、デーブも帰宅したようで見かけないが、まだまだ飲みながら、自転車談義をしている人は多い。しかし、土地勘の少ないところで深夜に移動するのも危険なので、引き上げることにする。もう町は人気が少なくなっているし、夜道なので細心の注意を払い、マーケット通りを北東に向かう。 ビールを1杯飲んだだけなのでお腹も空いている。どこかで食べ物を調達できないかと思ったら、一度利用したことのあるマクドナルドがまだ開いていたので、テイクアウトしてYHに戻って食べることにする。 YHに戻り、2階のコモンスペースで食事をしていると、私と使っているのと同じノートパソコンを広げて仕事をしている人がいる。食後に声をかけ、少々話をすると、日本語が少々出来るようで、ノートパソコンにも日本語を入力する機能を付加してあった。 彼は、リロイさんと言い、鉄道や乗り物の研究を趣味でしている人で、シアトルの高校の教師だという。なんと日本の路面電車の本を持っていて、翻訳しているそうだ。何度か日本に行ったこともあり、日本の鉄道に興味を持っているどころか、鉄道に関しては、普通の日本人よりよっぽど詳しい。私も実際に普段利用している路線とか、旅で使ったことのある路線を話題にしたが、彼の方が詳しいぐらいだった。 寝る前にカウンターにて明日の晩の宿泊も追加する。ちょっと心配していたが、部屋は空いているようで、ベッドを移動する必要もないようで助かった。 |