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朝起きると、天候は今ひとつ良くなく少々曇っている。迷ったあげく、もう一泊することに決定。早速、受付にてもう一泊する事を告げて、宿泊料金を支払う。 さて、今日はこの町でのんびりしよう。そして、ロジャーさんをなんとか探して、会いたい。もうとても偶然ばったりということは期待できない規模の町だが、サン・フランシスコでのデSFBCのダイレクターのデーブさんの例もあるので、あり得ない話ではないが。 サンタ・クルズのYHは、なにやら歴史のあるコテージのようで、町の文化財として保存されているらしい。 |
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| Santa Cruz地域でも"Bike to Work Day"が実施された |
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まず、昨日行った商店街のあるパシフィック・アベニューに行き、明るい中もう一度どんな店があるのか散策。ある店のショーウィンドウには、"Bike to Work Day"(自転車通勤の日)というイベントのポスターが貼ってある。サン・フランシスコエリアで行われた物と同種のイベントのようだが、別な主催の物で、同じ時期にこちらでも行われたようで、相変わらず自転車熱の高さに感心する。 朝食代わりにコーヒーでも飲みながら、軽く何か食べたいと思いつつ、沢山あるコーヒーショップのどこに入ろうか迷う。結局、通りの一番北端付近にあるルル・カーペンターというお店で、カプチーノとアップルパイを買って、店の前の歩道に出された席でいただく。 のんびりと、今日の予定を考えながら、周囲を見ていると、いろいろなスタイルの自転車が行き交うのが見える。子供を乗せたトレーラーを引く自転車や、私も愛用している寝そべり型のリカンベントという車種の自転車も普通に走っていてびっくりする。 さて、ロジャーさん探しの始まりだ。彼とは、1995年に英国の自転車イベントで出会って以来、何度か電子メールを交換したが、今回の訪米で久しぶりに出した電子メールは宛先不明で戻ってきてしまった。いろいろ調べたが、彼がサンタ・クルズに住んでいるというだけで、詳細な住所や電話番号などを知ることは出来なかった。唯一の手がかりは、同じく英国のイベントで会ったニューヨーク在住の人から教えてもらった、自転車店だ。その自転車店は、我々が共に所有しているモールトンという英国車を扱うサンタ・クルズでは唯一の店のようだ。 |
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| Rogerさん探しでお世話になった自転車店Sprockets |
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事前に調べていおいた店、スプロケッツの地図を頼りに、州道1号線と繋がっている少々交通量の多いミッション通りを走る。いくつもの自転車店があり、もしかしたらと店名を見る度に違うのでガックリ。やっと通りの右側にスプロケッツの看板を発見。きっとこの町で一番の自転車店であると想像させる大きさだ。 お店に行って、自転車を折り畳んで店の入り口に置き、中を見ると、モールトンは無いようだが、いろいろな自転車が置いてあり、興味をそそる。以前から欲しかったアームウォーマーで良い物があったので買う。これは、着脱が容易なので、体温調節が難しい自転車にとって、助かる防寒具だ。 レジにて購入した際、ロジャーさんのことを聞いてみると、知っているとのこと。店主はモールトンを彼から購入したと言うことだ。ロジャーさんの自宅住所や、電話番号などプライベートなことは解らないが、彼が経営するレストランを知っているといい、親切に教えてくれたので、早速、昼食がてらに向かうことにする。 |
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教えてくれたレストランは、昨日も通った、ショッピングセンターのエリアにあるようで、すぐ近い。行ってみると、ショッピングセンターに併設されてい割にはしっかりした感じの店だが、昼食なので、それほど高くはないだろうと気軽に入ってみる。エスニック風の料理を頼んで、食後、支払いを済ませた後、ウエイトレスにロジャーさんの事を尋ねると、彼は、はもうオーナーではないとのことで、今ここには居ないと言う。もしかしたら、彼はお店などを処分してこの町を出ていってしまったのかと、ガックリする。 スプロケットで教えてもらったお店はもう一つあった。スプロケットに戻って、もう一つのお店の場所を詳細に聞き出し、捜索再会。もう一つのお店は、ショッピングセンターを越えた先にある有る商業ビルの一角にあるようだ。そのお店はそのビルの一番端にあり、営業しているのかどうか解らない感じだったが、恐る恐るドアを開けて入ってみると、高級な中華料理店で、少々薄暗くしている。 従業員を捜していると、カウンターに居た人が声をかけてきた。ロジャーさんの事を尋ねると、やっぱりプライベートな情報は解らないとのこと。唯一知っている連絡先はこちらだと良い、メニューにある電話番号に電話をかけてくれるが、良く見るとそこは先ほど行った店で、電話でもう一度問い合わせても、解らないとのこと。このビルの同じ並びにある中華家具屋もロジャーさんの経営なので、そこに行って尋ねると良いと教えてくれたので、望みを託してその店に向かう。 |
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| Rogerさんのお店の倉庫の片隅にあるMoulton |
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| | 倉庫の1階の片隅には常用しているMoulton 4 Speed |
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教えてもらった、シェンズ・ギャラリー・アンド・インポーツは、入り口からして、東洋の家具を扱っている店であることを主張していて、すぐに解った。入り口を入るなり、スタッフの女性が出てきたので、ロジャーさんの事を尋ねてみる。プライベートなことは知っていても教えてくれない可能性があるので、1995年に英国で会ったことがある事と、旅でこの町に来て是非会いたいことを告げると、今はお店の倉庫のオフィスにいるだろうと教えてくれ、その場所を地図で教えてくれた。 その場所から、数百メートル南の方面に行ったところの工業団地のようなエリアの一角に、先ほどの店の名前の看板を掲げた倉庫があった。建物の外に従業員の人が居たので、ロジャーさんの場所を尋ねると、倉庫の中に案内してくれ、2階の事務所にいるロジャーさんを呼びだしてくれた。階段から懐かしい顔の男性が降りてきた。ついにロジャーさんを見つけることが出来た。下りてきたロジャーさんは私の話を聞いて、だんだん思い出したようで、ニコニコしながら、2階のオフィスに案内してくれ、3度も日本にサイクリングに行ったことを詳細に話してくれた。彼は、旅先で使う銭湯と、ラーメン屋さんがお気に入りで、どこに行っても親切にしてくれる日本人が大好きとのこと。他にも、最近サイクリングに行ったスペインの話とかで、盛り上がる。 私からは、机の上のパソコンで、1995年にロジャーさんと出会ったイベントのことを記述したWWWページを見てもらう。ロジャーさんと一緒に映った写真を見せると、とても喜んでくれた。そして、これからモンタレーに向かって走るコースも、詳細に教えてもらった。もちろん彼は地元の人なので、何度も走っている。私の持っている地図のコースを、これは正しいと評価した上で、いつも使っているお勧めのルートを教えてくれる。 事務所の中には、以前、彼が商売で扱っていた自転車数台や部品の数々が置いてある。ビンテージ価値のある物や、廉価版のタイプを含めて、各種モールトンだ。倉庫の1階には、日頃の足として使っているのだろう、手入れされた、古いタイプのモールトンが置かれていて、それぞれ写真を撮らせてもらう。 私がYHに2泊していると言うと、YHのスタッフの一人を知っているという。その人の容姿を聞くと、今朝受付をしてくれた女性スタッフのようだ。是非これをそのスタッフに渡して欲しいと、簡単なメモのような手紙を渡された。いくら同じ町に住んでいるとは言え、こんな偶然もあるのかと思う。 |
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| Rogerさんの自宅のガレージに壁に掛けらたMoulton4台 |
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| Rogerさん宅にてCaliforniaワインで再会の乾杯 |
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突然の珍客にもかかわらず、仕事の手を休め、私を自宅に案内してくれるというので、自転車を畳んで、彼の車に乗り込む。ロジャーさんの自宅は、車で行くほどの距離ではない、ほんの近くで、2つのレストランと、家具店、そしてこの倉庫からも近い。 家の前に車を止めて、中に入ると、倉庫の中壁には、モールトン自転車が4台ずらっと掛かっている。今回私が乗っているブロンプトンも2台床に置かれていて、いつでも乗れるようになっている。ブロンプトンを所有していることは知らなかったので、その話をすると、もちろん彼もチャネルさんのことをよく知っているようで、パロ・アルトのお店には行ってみたかと言うので、もちろんと応じる。 自宅の中には、リベンデールというブランドの自転車が部屋の中に飾るように置かれている。この自転車はヨーロッパ風のオーソドックスなスタイルの美しい仕上げの軽快車で、作っているのは、今回訪問先としてリストアップしているベイエリアの町にあるリベンデール・バイシクル・ワークスだ。この店のオーナーは、K君の親友で、グラントさんと言う人だが、ロジャーさんもよく知っている人らしく、自転車関係の知人のつながりを感じてしまう。 倉庫のテーブルで、彼お勧めのカリフォルニア・ワインで再会の乾杯をする。夜は、彼もお気に入りの日本食レストランで食事を一緒にしようと言うことになり、YHに迎えに来てくれるというので、時間を決めて、別れる。彼のお薦めのルート、サンタ・クルズの海岸線を、ナチュラル・ブリッジから走ってから、YHに戻ることにする。 |
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| Santa CruzのNatural Bridge |
| | Natural Bridges State Beachに沢山いるカモメ |
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ロジャーさんの家の前の道を南下して海岸沿いに出る。ナチュラル・ブリッジを目指して、海岸線を西に向かうが、向かい風が強くて難儀する。この道はどうせ戻ってくる道なので、強い海風を回避するために、一本内陸の道にシフトして、その道を西に向かう。その道が突き当たったエリアがナチュラル・ブリッジ・ステイト・ビーチとなっていて、そこから南下するとナチュラル・ブリッジを見学できる駐車場があった。 ナチュラル・ブリッジは、想像していたとおり、自然が作った橋だ。波で浸食されて出来た穴がある岩と言ってしまえばそれまでだが、カモメなどが沢山生息していて、ビーチも美しく、市民の憩いの場と言ったところか。 めずらしく200mの望遠レンズなども使って、ナチュラル・ブリッジや、飛び交うカモメなど撮影してYHに戻るべく駐車場を出る。海岸線には車道より海側にサイクリングロードが作られていて、追いかぜと言うこともあるがとても快適である。途中、断崖になった入り江があって、自転車を止めて歩いて断崖まで行って写真など撮っていると、後ろから、自転車に乗った夫婦が走ってきた。奥様は白い新しいモデルのBromptonに乗っていて、旦那はトライシクル(三輪自転車)に乗っている。話をすると、普段は旦那のテリーさんも黄色いBromptonに乗っているが、足を痛めて今はトライシクルだそうだ。後ろのカゴには松葉杖が見える。やっぱり、パロ・アルトのチャネルさんの店で購入したそうで、私がペダルに装着しているクリップを何処で買ったのかと尋ねるので、リベンデール・バイシクル・ワークスの電話番号やWWWページのURLを教えてあげる。 先に走って行く彼らの後を追うように、私も出発。美しい海岸線を見ながら気持ちよく走っていると、灯台が見えてきた。この付近も、ステイト・ビーチになっているようで、灯台の向こう側の海では、黒いウエット・スーツを着たサーファーが30人ぐらいサーフィンをしているのが見える。もうちょっと行くと、サーフィンをする人の像があり、ここサンタ・クルズはサーファーのメッカであることがわかる。 |
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| なんとMoultonオーナーだったYHのスタッフの女性に説明するRogerさん |
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結局、ロジャーさんと待ち合わせた約束の時間を1時間も過ぎて、YHに到着。Bromptonで走ってきたロジャーさんは待ちきれなかったのか、YHの庭のベンチに座って、つまみを片手に缶ビールを飲んでいる。YHのスタッフの女性が二人のお揃いのBromptonに興味を持っているようで、話しかけてきたので、小径車の話になる。チャネルさんと私がモールトンの話をすると、その女性スタッフは、私もそのモールトンを持っていると言って、自転車小屋に取りに行った。私とロジャーさんは、さしずめモールトンではなく違う自転車だろうと話していたら、本当に古いモールトンが出てきてびっくり。それも、色も型式も、ロジャーさんの倉庫の1階にあったものと同じだ。 そのスタッフの女性は、このモールトンを、安価で知人から譲ってもらったとのこと。彼女はもちろんこの自転車の価値を知らない。これはクラッシクカーのような貴重な物で云々と、2人でよってたかって解説し、これは大事にしなさいと忠告。4段変速の自転車だが、リアハブの内装ギアが故障でもしたのか交換されていて、3段に変更されているとロジャーさんは指摘。ロジャーさんも予想外の出会いにご満悦だ。私の泊まっているYHにて、偶然モールトンオーナーと会うなんてびっくりである。ロジャーさんも、地元にこのようなモールトンが存在していることに驚いていた。モールトンと言う自転車で繋がっている私とロジャーさんの再会の何らかのエネルギーによって、このモールトンとの出会いも引き起こされたのだと、ロジャーさんが言う。私もそう思う。 |
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| 日本食レストラン「将軍」にBromptonと入るRogerさん |
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さて、夕食を食べにBromptonで出発。サンタ・クルズでは一番の日本食だと言うことで、ダウンタウンにあるレストラン将軍に行くことになった。店の前で、Bromptonを畳んで、店に入るが、人気があるらしく、とても混んでいて、入り口でちょっと待った後にテーブルに付くことが出来た。 寿司や刺身の類はすでに食べているので、ロジャーさんも日本でよく食べたという、豚カツを2人で注文することにする。ビールも、キリンビールの大瓶だ。出てきた豚カツは、巨大な物だが、薄くて、今ひとつだ。ロジャーさんは不満そうだが、私は久しぶりの豚カツなので、それでも嬉しい限り。和辛子を頼むが無いとのことでこれは残念。ロジャーさんがクレジットカードで支払ってくれる。ごちそうさまでした。 |
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ペダリングで痛めた右足首のアキレス腱が一向に回復しないので、湿布薬を購入したいが、薬屋さんはあるかと、食事中にロジャーさんに相談していたが、彼は食後にドラッグストアに連れて行ってくれる事を忘れていて、YHまで戻ってきてしまった。場所だけ教えてくれて、もうこの時間だから閉まっているだろうから、明日朝にでも寄ると良いとアドバイスしてくれた。別れ際、これから先の道中、何かトラブルがあったら、連絡するようにと言ってくれた。とても助かる一言だ。 YHの受付でこの時間薬を買うことができる店はないかと尋ねると、ロジャーさんが紹介してくれた、ロングス・ドラッグがまだ開いているはずだと言って、電話で確認してくれた。10時まで開いているというので、買い物に出かけることにする。 |
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ロジャーさんから場所を教わったロングス・ドラッグに行ってみると、薬だけではなく、有りとあらゆる物が売っている雑貨屋さんのようだ。いわゆる米国で言うドラッグストアーとはこのような物かと納得し、湿布薬やリップスティックの他に、チョコレートやミネラル・ウォーターなども買い込む。それから、耳栓も20種類ぐらい有って、びっくりする。 |
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YHに戻る途中にある24時間営業のビジネスセンター、キンコースに立ち寄る。日本で言えば、コピーセンターと言ったところだろうか。このキンコースは東京でもちらほら見かける。ここはインターネットが使えるということで、YHの受付にも情報があった。もしかしたら日本語が参照可能かと思い、使い慣れたMacintoshを借りて、メールをチェックするが、この店の環境でも日本語は見ることはできなかった。 |
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YHに戻って、部屋の中で自転車の掃除をしていると、昼間モールトンを見せてくれた女性スタッフが、新人だろうか、もう一人のスタッフを連れて入ってきて、空調の説明などしている。私の自転車を見て、この自転車コンパクトに折り畳めて素敵なんだと、もう一人の人に説明しているので、一度折り畳みを見せてあげる。 シャワーを浴びたあと、ソファーで旅の記録を付ける。今晩の宿泊者は私だけのようだ。今日はとてもエキサイティングな一日だった。このYHにとどまって良かったなどと思いながらベッドに潜り込む。 |