|
飛行機は成田空港に着陸した。しかし、座席から立ち上がることができない。完全に腰が固まっているようだ。必死になって体を揺すり、立ち上がろうとするが、激痛が走る。頭の中はパニックになり、自分が担架で担ぎ出される絵を想像し、顔面蒼白状態となる。皆が出終わってから、やっとのことで、背もたれに捕まりながら、かろうじて歩き出すことができた。 旅の日程を無事終了し、帰路のフライト中は完全に気が緩んでいた。旅の出発前に腰の不調にたまらずかけ込んだカイロプラクティックの先生からも、酒は厳禁であると言われていたにも関わらず、いいきになって飲んで、酔っぱらっていた。ゆったりとした座席が仇になり、腰が不調であることも忘れかけていたのだ。 |
|
パスポートコントロールを難なく通過し、ラゲッジルームへ。腰の激痛に耐えながら、預けてある自転車を拾い上げ、カートに乗せる。機内で隣の席だったイスラエル人の若者がラゲッジルームでタバコを吸っているので、ジェスチャでたしなめると、私も一服したいのだと勘違いして、タバコを一本差し出してきた。禁煙席でよっぽどタバコを我慢していたのだろう、喫煙コーナーがすぐそばにあるのに、この有り様だ。 |
|
この腰の状態では、自転車を担いで、鉄道で自宅へ帰るのは無理そうだ。旅の出発前に作ったクレジットカード会員用のラウンジの場所をインフォメーションで教えてもらい、カートを押してとぼとぼ向かう。 ラウンジの外の廊下にカートを置き、バッグだけもってラウンジのソファに落ちつく。しかし、深く腰掛けるとまた立ち上がれなくなるので、浅く腰掛けて、体をまめに動かしながら、休憩を取る。 40分休憩し、少し腰の状態も落ちついたので、帰路に付くことにする。カートを押して、第2ターミナル駅に向かう。 |
|
帰路を急ぐわけではないが、腰の状態を考え、京成スカイライナーに乗ることにし、チケットを買い求める。ここで、頼りのカートを放棄し、自転車は自分で担がなければならない。 第1ターミナル方面から来たスカイライナーに、必死の思いで乗り込む。中途半端にソフトな座席には気をつけて乗車していたにも関わらず、やはり腰を動かしていないと、固まってしまい、トイレに立つにも必死である。 |
|
またまた必死になって荷物を担いで下車し、JRの上野駅に向かう。毎度のことであるが、腰の調子が悪くなくても、ここはサイクリスト泣かせの乗り換えである。 |
|
必死で階段を上り、高崎線のホームへ到着。何も考えずに、より空いている最後尾の車両に乗り込んだ。 上野駅を出たときはそれほど混んでいなかった列車内も、土曜日のため、途中から学生たちが大勢乗ってくる。乗り込んだのが短い編成の列車の最後尾のため、長い編成を期待してホームで待っていた人が集中するのだ。特に大宮駅からは列車の中はかなり混んできて、座っていてもつらい状態で冷や汗が出てきた。 |
|
やっと桶川駅に到着。大宮からとても長く感じた。ここからが、また大変。なんとか腰を起こし、自転車とバッグを担いでてやっとの事でプラットホームへ。這いずるようにホームの上を移動し、エスカレータに乗り、改札を通過し、迷うことなく、タクシーで自宅に向かう。 |
|
自宅に着くなり、冷蔵庫から取り出したアイスノンを腰に当て、ソファーでなく、堅い椅子に座る。こんな調子で月曜日は会社に行けるであろうか。とにかく明日の日曜日は腰の養生につとめるしかなさそうだ。旅に余韻は完全に腰の痛みでかき消されてしまった。 |