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| クラブハウスを改造したCleeve Hill YH |
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出発の準備をして、唯一の同泊であった彼に、お別れの挨拶代わりに日本から持参した土産をプレゼントする。日本画の入った小さなうちわであるが、今までいろんな人と出会ったが、プレゼントをするタイミングを逸していて、いくつか余っている。 今日はチェルトナムの町に下り列車でロンドンへ向かうだけだ。その前にもう一度、クリーブ・ヒルの展望台に登って展望を楽しむ。 |
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話には聞いていたが、かなりの急勾配の下りである。荷物が多い上に、ブレーキの利きが良くない愛車なので、慎重に下り始める。 |
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下りのスピードに慣れてきたら、あっと言う間にチェルトナムの町の入り口まで下ってきてしまった。 地図で気になる場所があるので、寄り道してみる。道路が新円を描いていて、放射状に道が出ているのである。小さい円なら交差点のロータリーだろうが、これは直径200mぐらいはある。 その場所に行ってぐるっと一周してみると、円形の公園を取り囲むように造成された閑静な住宅地であった。公園の敷地に面した住宅にとっては、大きな庭があるような物である。日本では見ない町づくりである。 チェルトナムの中心部に近づくと車の交通量が増え走りにくくなってきたが、そんな様子も本当の中心部だけで、少し郊外に出ると道幅も広く走りやすい。とりあえず、町のインフォメーションに向かうが、オフィスは係員が出はらっているようなメモがあり、閉まっていた。そんなに観光客も来ないのか、のんびりした物だ。 ガイドブックによると、チェルトナムは作曲家ホルストの生家があるそうだ。交響曲「惑星」ぐらいしか知らない私にとって、ホルスト自身に特別な興味があるわけではないが、列車まで時間があるので、寄ってみるべく彼の生家を目指す。しかし、見つからない。この町では唯一の観光ポイントのように思えるが、きっとひっそりと静かに存在しているのだろう。私のように彼のファンでもない人間は来るなと言うことだろうと思うこととし、チェルトナム・スパ駅にハンドルを向ける。 |
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チェルトナム・スパ駅は郊外にあり、地図では市の中心部からずいぶん離れているように見えたが、快調に走ってきたこともあり、10分ぐらいで着いてしまった。列車の時間を確認し、駅の周辺を散策するが、まだ閉まっている商店が何件があるだけ。唯一開いていたガソリンスタンドに併設された店でサンドイッチと飲み物を購入し、駅の待合い室で遅い朝食を取る。 そろそろ列車の到着時間なので、自転車を押して駅舎に入る。ホームは地上より低いところにあり、跨線橋から階段で降りるようになっている。どうやって自転車を下ろそうかと思う間もなく、反対側の入り口から延びているスロープを発見。自転車のためではなく、大きな荷車を押してホームまで行けるようになっているのはこの駅でも同じだ。この駅はブリストルに向かう途中に停車した駅で、見覚えのある塀がホームを囲んでいる。 自転車を積み込むための荷物車が列車の前後どちらに付いているのだろうかとホームできょろきょろしていると、サイクリストが一人スロープを下ってきて、私に荷物車の場所を聞く。解らないと答えると、早速駅員さんに聞いてくれ、ホームの一番後ろに移動し、列車を待つことになった。 アメリカ人サイクリストの彼とほんの少し会話している間に列車は到着。急いで自転車を荷物車に入れ、車掌さんの指示に従い、自転車を置いてから、列車内の通路を使って、客車に移動した。 空いている客車内の座席に座ったとたん、さっきの車掌さんが来て、自転車の持ち込み料金£3.00を請求される。話には聞いていたが、払うことになったのは初めてである。やっぱり有料なのだ。£3.00といえば日本の手回り品料金より高いが、パックする手間を考えれば安い物だ。ついでに車掌さんに乗り放題のチケットに今日の日付を書き入れてもらう。しかし、よく見ると昨日の日付だ。これではまずいので、車掌さんを呼び止めて、訂正してもらう。手でグチャッと書き直しただけなので、この先他の列車での検札で疑われるのではないかと心配になる。「あんた、昨日使ったチケットを今日も使おうたってダメだよ」ってね。 |
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列車はバーミンガムの駅に到着。乗り換えの時間が少ないので、自転車を手早く降ろし、エスカレーターでロンドンのユーストン駅行きのインターシティーの到着するホームに移動する。数日前ブリストルに向かう際に乗り換えた駅なので、エスカレーターがスロープの代わりであるという、この駅の勝手は知っているつもりだ。 幸いにも列車は予定よりも遅れいているようで、ホームに着くと列車は入線していなかった。駅員さんに、荷物車の位置を聞き出し、移動する間に列車は到着。なんとか間にあった。ほっとしたのもつかの間。荷物車に自転車を積み込もうとすると、車掌さんが「予約はしてあるのか?」と聞いてきた。一瞬パニックになったが、どうにでもなれと、さっき支払った£3. 00のレシートを見せて、なんとかOKをもらった。お金は払ってあったが予約をしていたわけではない。自転車を積み込むのに予約が必要だという話も聞いたことがあるが、本当チェックされることがあるのだ。先ほどの£3.00といい、今回の予約チェックといい、ロンドンを出て湖水地方へ向かい、そこから、ブリストルへ向かう間はまったくなかったことだ。まるで、行きはよいよい、帰りは何とやらですな、これは。 |
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再び、ユーストン駅に戻ってきた。今日はシティー・オブ・ロンドンYHにチェックインして、自転車を置き、列車で愛車の部品を注文してあるスイフト・サイクルへ行き、その後、ロンドン・ブリッジ駅で西川さんと落ち合い、つかの間ではあるがロンドンを案内してもらうことになっている。 旅の始まりにうろついた感を頼りにロンドンを走る。とにかくテムズ川沿いに出て、東に走れば、YHのはずだ。途中、大英博物館があり、浮世絵の展示の案内ポスターの前で写真を撮る。大英博物館は膨大な展示量があり、まじめに見ると3日はかかるというのは有名話なので、きっぱりあきらめて、先を急ぐ。 |
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テムズ川を東に向かい、ブラックフライヤーズ駅のそばの路地を入ったところに、シティー・オブ・ロンドンYHがあった。古い石造りの建物がびっちり連なっているので、こんな中にYHなんて有るわけ無いと思っていたら、地図の指示するとおりにYHの看板があった。ドアを開け、奥にはいるとカウンターがあり、全くYHそのものだった。 とにかくチェックインするためにカウンターに並ぶ。といっても前に一人が居るぐらいで、すぐに終わると思ったら大間違い。なにやら、係員とぼそぼそはなしながら、考え込んでいる。いったいなにをしているんだと思い、イライラしてくる。 YHなんだから、泊まるか泊まらないかのどちらかだろう。もしかしたら満室でベッドがないのかと心配になったが、そんなことはなかった。私に応対した係員は、どうも新人らしく、格好はスーツでびしっと決めているが、周りの人に聞きながらチェックイン作業をしている。そして、自転車の置場所を訪ねると、私を案内しながら、わからなくなり、また聞きに戻る始末。結局入り口のドアの並びにガレージがあり、その木戸を開けてくれ、外から自転車を中に入れたのだった。 部屋に入り、ロッカーに荷物を押し込み、必要な物だけ持って外に出た。10分も有れば済むと思ったチェックインが30 分。こんなに時間がかかるとは。 |
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YHから歩いて数分でブラックフライヤーズ駅に到着。この駅は小さいながら、南の方面への中距離列車の始発駅にもなっている駅である。もしかしたら、地下鉄を利用した方が簡単に行けるのかもしれないと思いつつ、高いところにある中距離列車の始発ホームに向かう。 ホーム数は、5,6でそれほど多くないのだが、どの列車に乗るのか全くわからず、うろうろしていると、黒人の駅員が紳士的に教えてくれた。10分ほど後に、列車はホームを滑り出し、テムズ川を渡り、あっと言う間にロンドン・ブリッジ駅に到着。 |
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ロンドン・ブリッジ駅に到着したのはいいが、ここからが難しい。フォレスト・ヒルと言う駅に向かうために乗る列車の行き先は聞いているが、同じ行き先でもフォレスト・ヒル経由という列車に乗らないと、とんでもない方に向かってしまうらしい。 それでも何とか、フォレスト・ヒル経由の列車を見つけて飛び乗った。ちょうど発車寸前で、グッドタイミングであった。列車は、ロンドンの住宅地を見おろすように高いところを走る。ビートルズの映画に出てくるような町をぼーっと眺めて、やっとロンドンにいることを実感した。兄の影響で小学生からビートルズマニアである私の頭の中のロンドンは、ピカデリーサーカスのような繁華街ではなく、アパートが立ち並ぶちょっとひなびた住宅地の印象が強いのだという事を実感した。あの路地からビートルズの面々が駆け出してくるのを想像するのは容易なことであった。 |
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途中の駅で、列車にマウンテンバイクを押した少年が乗り込んできた。ドア付近に平然と自転車を立てかけている。列車は日本のJRの中距離列車のようなスタイルで、立っている人が数人が居る程度の混み方であるが、私にとっては異様な光景であるが、こっちの人にとっては当たり前のことで誰も見向きもしない。 列車は住宅地を抜け、木々の多い地帯を通り、フォレスト・ヒル駅に着いた。小さな駅で、跨線橋を使って、反対側の駅舎のある側に渡り、駅前に出る。日本にも良く有るような駅のスタイルだが、やっぱり改札がない。私は今日一日使える切符を持っているが、一度も見せていないので拍子抜けだ。 |
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聞いていたとおり、線路と平行の道をひたすら行くと、商店街の中、緩やかな坂の途中にスイフト・サイクルが有った。我が愛車アレックス・モールトンを扱う店だ。早速中に入り、おじさんに挨拶すると、息子さんのサイモン・エドワーズさんを紹介してくれた。紅茶を入れてくれ、いろいろと話をした。今年は忙しく参加できなかったが、彼もBOAのミーティングにはよく参加するとのことだった。そういえば、ミーティングの中で、帰りにロンドンのスイフト・サイクルに寄るという話をしていたら、サイモンが来ているのではないかと話していた人がいたことを思い出した。 この店には、旅立つ前にファックスで部品(愛車の風よけのフェアリング)を土産として注文し、旅の最後にこの店に立ち寄る事は連絡済みだ。しかし、色の関係で、部品の入荷が間に合わないかもしれないとのことだった。案の定まだ入荷していないとのこと。もし入荷していてもかなりな大きさの物なので、別送品として送ってもらった方が助かる。ついでに他の物も注文し、お金だけ払い、唯一在庫があったタイヤとチューブ、それから衝動買いした革サドルだけ持って帰ることにした。 名残惜しいが、西川さんと待ち合わせているので、ロンドン・ブリッジ駅に戻らなければならない。店の前で写真を撮って、来た道を戻る。 |
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駅ではほとんど待たずに、来たときと逆向きの列車が到着。今度は選択の余地無く、ロンドン・ブリッジ駅行きの列車のはずだ。乗り込んで、空いている席に座り、タイヤを抱えている内に、この旅でやろうとしたことが一通り終わり、ほっとしたのか、うとうと眠り込んでしまった。 |
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ロンドン・ブリッジ駅に到着。そろそろ通勤ラッシュの時間帯だ。さすがのイギリスでもこの時間帯は日本と同様、人が多い。西川さんとの待ち合わせにはまだ時間があるので、駅の周辺をうろうろし、ついにはテムズ川に架かる橋、ロンドンブリッジを渡り、下流に見えるタワーブリッジやテムズ川に浮かぶ戦艦を眺める。 待ち合わせ時間のちょっと前にロンドン・ブリッジ駅に戻り、待ち合わせている、ガーファンクルというパブを覗いたりしている内に西川さんと合流する事ができた。1週間ぶりの再会である。 案内されるまま地下鉄で移動し、ロンドンの繁華街へ行く。ハロッズなど、土産を買うのに良い店をいくつか紹介してもらい、その後は、ジャンクフードではあるが、魅力的な味のするケバブを食べたり、両替をしたり、トラファルガー広場や時計台を見たり、シャーロック・ホームズのパブで一杯やったり、2階建てバスに乗ったりして、短時間ではあるが、西川さんに密度の濃いロンドン案内をしてもらった。最後に不慣れな私のためにYHに近いと思われるところまでバスで移動し、またパブで一杯。こんなパブが日本にも有ればなと、二人で意気投合した所でお別れ。次は日本で会いましょう |
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西川さんと別れ、10分も歩かない内に、YHにたどり着いた。さすがロンドン在住の西川さんである。YHのかなり近くまで送ってくれた結果になった。まだ酔いも覚めない状態で、YH のインターホンのベルを鳴らすと、インターホンから部屋の番号を言えと言っている。忘れたと言い返すと、鍵の番号を言えとのことなので鍵の番号を言ってドアのロックを解除してもらった。 ロビーでは何人かの日本人が歓談していたので、挨拶し、明日、日本に帰ることを告げる。後で考えると、一方的に酔っぱらった日本人から、挨拶と、お別れを告げられあきれていたにちがいない。 |