イングランドサイクリング

イングランドサイクリング 詳細
1995年9月19日 火曜日 ベアトリクス・ポッターの家とナショナルトラストの聖地を走る


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走行ルート
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Ambleside YHAmbleside InformationAmblesideNear SawreyHawksheadSkelwithGlasmereGlasmere YH
天候
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晴れ時々くもり
宿泊先
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Glasmere YH
走行データ
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最高時速:39.6km/s
積算距離:93.2km
走行距離:35.15km
走行時間:3時間02分27秒
平均時速:11.5km/s
支払い
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ヒル・トップにて
入場料(入場料£2.35はNT入会後返却) UK£0.00
NT(ナショナルトラスト)年会費UK£25.00
ヒル・トップ・ガイドブックUK£2.50
しおり5個UK£8.25
ベアトリクス・ポッター・ギャラリー入場料(NT非会員は入場料£2.50)UK£0.00
ホークスヘッドにて昼食
サンドイッチ2個UK£3.98
スパークリング・ドリンク(オレンジ)UK£0.67
Glasmere YHにて
宿泊費UK£8.00
夕食費UK£4.00
朝食費UK£2.70
缶ジュース(Lilt)UK£0.50
缶ジュース(Diet Coke)UK£0.50
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Ambleside YH 09:30発
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立派な建物のAmbleside YHs5tr
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立派な建物のAmbleside YH

昨晩知り合った二人と一緒に朝食をとり、出発の準備が整うと、YHの前で写真の撮り合いが始まった。藤井さんはアレックス・モールトン異様な形式の車体を目の当たりにし、かなり興味を持ったようだ。男の子の本能むき出しのお父さんをよそに、娘さんはほとんど興味を持っていないようだったのが、印象的だった。

今日は相乗りして移動するというロイさんを乗せた藤井親子の車に手を振り、私もYHを出発。もうここはウインダミア湖の北端に近く、アンブルサイドの町の入り口で、程なくあらわれた看板を頼りに、第一目標であるインフォメーションを目指す。

Ambleside Information 09:45着
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Amblesideの中心部s5tr
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Amblesideの中心部
町の名所の一つBridge Houses5tr
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町の名所の一つBridge House

町の中心部の小さな広場に面する建物の一角に作られたインフォメーションは、思ったより狭く、壁には一面、地図や観光情報の貼り紙が張られている。

私は今回の旅で持参したフランク・パターソンの線画のコピーを手に市内の地図を目を皿のようにして見つめた。その絵の片隅にはここの絵であることを示す「AMBLESIDE」という文字がはっきり書かれている。80年以上前、サイクリングをしながら行く先々で線画を書き続けたパターソンは湖水地方の絵も多く残している。その絵の場所を今回のサイクリングで1つでも2つでも見てみたいと思ったのだ。

とにかく、この絵の中には川が描かれていて上の方には橋が架かっている。町を流れる川を横切る道は限られているので、取り敢えずそこを目指すこととする。はたして、この景色がアンブルサイドのどこなのかまったく見当がつかないが、川の左右に立つ石造りの家を見る限り、郊外ではなく町中に違いないと直感したのだ。

観光客の多い道を、最初に目星を付けた橋に向かってゆくと、左側に小さな石の建物が見えて来た。どこかで見たことがあるなと思っていると、YHのロビーに有った観光案内の写真の建物で、川の上に架けた小さなアーチ橋の上に立てられた2 階建の小さな建物である。一階ではちょっとした土産を売っていて、曲がりくねった外階段を登ると二階はギャラリーになっていた。

ブリッジハウスと呼ばれるその橋の上の建物から眺めてもパターソンの絵の橋は見つからない。絵の中の橋は高いところにかかっているが、その様に見える所はない。

交通量の多い道を横切り、反対側の欄干に自転車を立てかけて、景色を眺めていると、川の横に見たことのある建物が目に入った。窓の数の違いや少しの歪みはあるものの、絵の中の建物に違いない。そうすると、橋はどこにあるのだろう。私道であろう川沿いの小道を歩いてゆくと、生い茂った木の葉の間から、石橋が顔を出した。パターソンが描いた80年前にはこんなに木は生い茂っておらず、ブリッジハウスのあたりから橋が見えたのだ。パターソンが描いた景色が存在していたことにうれしくなって、絵と同じ角度で写真を撮る。

今度は、絵の中の橋の上に行ってみる。絵の中の建物は上の橋の脇に入り口があり、「Old Mill House」と書いてある。橋の上から見て初めてわかったのが、建物のとなりにある木製階段のように見えた物は、実は水車だったのだ。ミル・ハウスとは流れの急になった川から水を引き入れて、水車を回し、粉をひくための建物だったのだ。絵の中で階段に見えるものが、実は水車であるという事実を知っているのは自分以外に何人いるのだろうか。きっとここまで見に来ないとわからないのだろうなと思うとぞくぞくして来た。

Ambleside 10:50着
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注目のわが愛車Alex Moultons5tr
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注目のわが愛車Alex Moulton

アンブルサイドの町を出て、ウインダミア湖の反対側のエリアを南下する。郊外に出ると沢山のウオーカーが時々車道の脇に現れる遊歩道を歩いている。湖水地方にかぎらず、英国ではフット・パスと呼ばれる丘やを結ぶ地道が沢山つくられていて、多くの人が歩いている。

Hawkshead 11:45着
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Hawkshead付近のEsthwaite Waters5tr
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Hawkshead付近のEsthwaite Water

ウインダミア湖の西側に位置するエスウェイト湖の北端にある町、ホークスヘッドに到着。特に休憩するでもなく、さっさと、エスウェイト湖の東側湖岸の道を走り、一路ニア・ソーリー村を目指す。

Near Sawrey 12:00着 13:15発
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Near Sawreyのベアトリクス・ポターの家Hill Tops5tr
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Near Sawreyのベアトリクス・ポターの家Hill Top
ポターの家Hill Topの入り口s5tr
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ポターの家Hill Topの入り口

エスウェイト湖の南端近くに位置するニア・ソーリー村に程なく到着。ここは湖水地方で一番有名な観光地である、ビアトリクス・ポターの家がある。彼女はこの周辺の景色を愛し、ここで多くの作品を書いたそうで、建物はナショナルトラストで管理され、公開されている。

ナショナルトラストは内外から多く会員を募り、会費で英国の自然や文化財を買い取って保護する団体で、ビアトリクス・ポターが絵本の収益でこの地方の土地を買い取り、そのまま残そうとしたことがナショナルトラストの創設に大きく寄与していると聞く。一度手にした山林や歴史的資産は、いかなる理由があろうとも転売や廃棄はできず、しっかりと保護されることが、法律にもなっているらしい。アンブルサイドのブリッジハウスも同様、ナショナルトラストに保護・管理されている。

入り口で見学料金を支払い庭に入る。花の咲く花壇の中の小道を行くとポターの家はあった。中に入ると薄暗い部屋の中にはしっかりとした家具が並んでいた。きしむ階段を登って二階へ行くと、窓の外を見て「ジャパニーズ・ガールズ」とつぶやいている人がいた。私も外を見てびっくり、先程はちらほらしか見掛けなかった日本人の女性が、団体でこちらに向かっている。それをみて、私も「ジャパニーズ・・・」とつぶやく。

英国の新聞タイムズ紙によると、今年の来館者は八万人になる見通しで、なんと、その四人に一人が日本人観光客だという。なんとタイムズは「日本人はベアトリックス・ポターの庭に入らないで下さい」との見出しを掲げたそうだ。日本人はピーター・グッズをたくさん買ってくれてありがたいが、古い家屋だから入場者を減らさないと傷んでしまう。宣伝を控えて関心をひかないようにする、とナショナル・トラストは言っているそうだ。どうやら去年、ピーター・ラビット誕生百年で、宣伝キャンペーンをしたのが効きすぎたので日本人が増えたとのことだ。

入り口の脇の土産売り場の一角に、ナショナルトラストのことが書いてあった。見入っていると、店員のおばさんがやさしく声をかけて来た。入会しますか?というようなことを言っているようだったので、日本人ですが入会できますか?と聞くと、もちろん!!とのこと。会費は基本的には年度ごとの入会らしい。ナショナルトラストというと知床のような土地をいくらかで買い取る形式を想像していたが、本家ナショナルトラストはそうではないらしい。ちょっと考えた後、旅の記念にと£25. 00の年会費を支払うと、ここの入場料£2.35を返してくれた。それと、英国内のナショナルトラストの管理施設のハンドブックやニューズレター等の会員向けの資料をどっさりくれた。これから自転車で走るのに思わぬ荷物になったが、そんな気分も吹っ飛ぶような、素晴らしい内容であった。

帰路は、来た時と同じ道を戻るのは芸が無い。エスウェイト湖の南端を回り、湖の西側を北上することにする。カメラを置いて湖を背景に写真を撮っていると、散歩している老夫婦が通りかかって、にこやかに声をかけて来た。シャッターを押してあげるというのだ。もう撮り終わったので結構ですと丁寧に断る。

Hawkshead 13:35着 15:00発
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Hawksheadの郊外にてs5tr
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Hawksheadの郊外にて

湖沿いの道を走っていると、ロードレーサーの2人組みに追い抜かれた。車が少なく、緑にかこまれた平坦で快適な道で思いっきり走れるなんてうらやましい。ホークスヘッドの町の手前で、YHの看板発見。ホークスヘッドYHだ。通り過ぎがてら入り口から敷地の中を覗き見ると白い建物が目に入った。まるで、どこかの金持ちの邸宅のような建物で、一瞬これからの予定を忘れて泊まりたくなってしまった程だった。)

来るときは寄らずに通り過ぎたホークスヘッドの町に到着。小さい町だが、観光客が多い。みな静かにのんびりと歩いている。弁護士事務所だった建物があって、今はポターの作品を展示するギャラリーになっている。ここもナショナルトラストが管理しているので、もしやと思い、先程入会時にもらったレシートを見せると入場料は無料だった。ここも「我々」の組織が管理しているというわけだ。

暗い建物の中には、ベアトリックス・ポターの作品がたくさん展示して有った。もちろん、みな自筆のものである。あまり詳しくはない私でも知っている、ピーターラビットの絵の原画である。筆の跡や、盛り上がった絵の具、ホワイトで修正した跡を見ると、書いている姿が想像できて、ぞっとするような感動を覚えた。これからポターの絵を見る目が変わりそうだ。

サンドイッチやピザのメニューが豊富な、明るい店で遅い昼食をとり、ホークスヘッドを後にする。少し来た道を戻り、途中から左に道をそれて、地図上では、はっきりしない道をとぼとぼ走る。車がやっと1台通れるような幅のアップダウンのきつい農道のような道をハアハアいいながら走っていると、見晴らしの良いポイントに出た。とてものんびりした風景を見ながら、一息入れているうちに、ポターの愛したこの土地の素晴らしさを、少しは感じられたような気がした。

Skelwith 16:00着
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道は、2車線の主要道路と合流した。どうやら予定通りに来ているらしい。少しゆくと、グラスミアへの近道の入り口、スケルウィズに到着。本来グラスミアへは、一度、アンブルサイドの町に戻ってから川沿いの道を行かなければならないが、ここから、グラスミア湖をせき止めるようにそびえる山を越えて行けば近道だ。

1車線の道を登り始めるとすぐに急勾配になった。地図上の道は等高線をたくさん横切るため、覚悟はしていたものの、こんなにすぐに押しになるとは思っていなかった。しかし、勾配が急であるため、あっという間に押し切ってしまったようで、山の上の方に行くに従って坂はなだらかになって来た。そろそろ頂上にある小さな池が見えるはずだと思っていると、またまたナショナルトラストの看板。この辺の山林も「我々」の管理地である。そして、YHの看板も発見。あれれと思って地図を確認すると、ここにもありましたYHが。なんと多いことか。

Glasmere 16:45着
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"CYCLIST DISMOUNT" 25%の急坂を下りGlasmereへs5tr
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"CYCLIST DISMOUNT" 25%の急坂を下りGlasmereへ

頂上付近で休んでいると、普通の自転車に乗った、女の子に抜かれた。走り始めて少しゆくと、急な下り坂が待っていた。道端の標識には「CYCLIST DISMOUNT」という文字が。自転車は危ないので降りて押しなさいということらしい。一般の人ならいざしらず、私にとってはそれほどの事はないだろうと、標識を無視して乗って下り始めると、とんでもない下り勾配。必死のフルブレーキングでも止めることのできない程で、出たスピードでカーブをこなすのがやっと。かなり焦りながら、なんとか勾配がゆるいところに出てほっとするも、またまた同じような下りが始まる。さっきの女の子は乗って下ったのだろうか。こんなことをくり返し、グラスミア湖が目に入ったと思ったら、すぐにグラスミアの町に到着した。

グラスミアの町は歩いている人がい。フットパスを歩き終えて、宿のあるグラスミアにかえって来たということだろうか、みな町の中心部に向かって歩いている。インフォメーションが目に入り、特に目的は無いが、自転車を止めて飛び込む。このインフォメーションもしっかりしていて、見ていて飽きない情報が満載だ。

外に出て、自転車を止めている所に行くと、一人のおじさんが話し掛けて来た。さっき、ポッターの家の前の駐車場で、私の自転車を見て、素晴らしい自転車だと話し掛けて来たおじさんだ。家族とドライブしているのだ。そのおじさん、ちゃんと鍵を掛けなければだめだよと言っている。私が、こんな田舎で、みな良い人ばかりではないかというと、たしかに、都市部よりは少ないが、自転車は頻繁に盗まれるとのこと。日本と違い、単に自転車を大切にしているため頑丈な鍵を掛けているのだと思っていたが、おじさんの話だとそうでもないらしい。

Glasmere YH 17:10着
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YHのガイドブックによるとグラスミアYHは町のメインストリートに近いところにあるようだが、見つからない。町の外れまで行って、橋を渡り、いいや、こんなに中心部から離れているはずはないと思い、戻る。どうやら、メインストリートから直角に入った道少し行くらしい。鬱蒼と茂った森の中にYHの看板が有った。サインに従い森の中を走ってゆくと、小さなお城のような立派な建物が現れた。ちょっと古びているが、あまりにも立派な建物なので、驚くばかりである。

チェックインを済ませ、自転車を自転車置き場に入れて部屋に入ると、山歩きをしている若者がいた。簡単な挨拶をして、あまりにも素晴らしい、建物の外観を見るため庭へ出向くと、これまた素晴らしい庭で、広々とした庭の回りは鬱蒼とした森に囲まれ、どこまでが敷地なのかまったくわからないほどだ。

夕食の時間になり、食堂のテーブルに付くと、隣は日本人の若者のようだ。彼の日本語の独り言に相槌を打つと、私の存在に気がついたらしく、なんだ日本人ですかと言う。簡単な自己紹介の後、これまた立派な夕食が配られるので、取りに行く。チェックインのときにメインディッシュを選ぶことができるのだ。我々が豪華な食事に満足していると、正面に座っている同室の英国人は、俺は日本食を食べたことがあると言い出す。量がとても少なく、あんな食事では山歩きはできない。どうだ、英国のメシはボリュームが有っていいだろうと言わんばかりである。普段は、パワーの出るお米を沢山食べているのだと言いたかったが、うまく英語に出来そうになかったのであきらめた。

夕食後は、これから私が走るコッツウォルズをバスで旅して来たと言う日本人の彼から情報を得るべく、食堂で地図を広げ、彼のお薦めポイントをしっかり聞き出す。コッツウォルズの丘陵地帯には、素晴らしい雰囲気の村や町が点在しているようで、彼は自転車でくまなく廻ることのできる私を羨ましがっていた。それと彼の持っているコッツウォルズの地図は、私が湖水地方を走るために使っているものと同じシリーズの物で、その存在も知ることができ、大きな収穫であった。

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