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私の旅の出発にあわせるように戦後最大といわれる台風が関東地方に上陸するべく近づいている。朝一番にタクシー会社に連絡するも繋がらない。兄に荷物を持ってもらい、私は自転車を担いで雨の中駅にむかう。風が若干強いが、雨は思ったほどではない。 |
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タオルで荷物にかぶった雨水をぬぐい、まだお世話になるだろうと、そのタオルを持って予定通り上野行きの普通列車に乗り込む。 今のところ、列車は想像に反して予定通り運行しているが、本当に時間通りに成田空港に到着できるのかはわからない。成田空港に着いてもフライトできるかどうかは定かでない。格安航空券なので、もし欠航にでもなったら、最悪、無効チケットになることも覚悟である。 |
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例によってJR上野駅から京成線の駅には少し歩かなければならない。雨の中、傘を差す余裕もなく、懸命に京成線の駅に到着。どうやら、京成線も今のところダイヤの乱れなく運行しているようだ。 |
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当日券の売り場に並び、次の特急のチケットを入手。朝食にする軽食も買い込み、列車に乗り込む。そしてスカイライナー号は予定通り出発。取り敢えずここまでは、予定通りである。 |
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ほとんど予定通りに成田空港に到着。すわり心地の良い席から立ち上がるときに、出発前にいためた腰が痛む。動かしていると痛みはさほどでもないのだが、固まってしまうと動き出すまでがつらい。 降りた駅は、終点の一つ手前の第2ターミナル駅。一早く荷物用のカートを入手し、幅の広いエスカレーターをなんども折り返して、出発用ロビーに登る。途中、車止めのある、屋外の道路に面した所に出ると、風雨が強くなっていることがわかる。 |
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航空会社のカウンターのあるエリアに入るには、預ける荷物のチェックが必要で、ベルトコンベアーの付いたチェッカーに自転車を入れる。 まだ目的のカウンターには係員がおらず、また自転車を持ってエリアを出る。 |
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1時間の暇をつぶすのはあっという間。もうこうなったら、なんとでもなれと、窓からぼーっと外を眺めていると、風雨は強くなるばかり。 チェックイン・カウンターでチケットを受け取り、指示されたANAのカウンターに向かい荷物を預ける。ここで、飛行機の出発の遅れに対するお詫びとして、\1,000の昼食券をいただく。遅れの理由を問い正すと、当然、天候による物だとのこと。天候による遅れならば、航空会社が乗客に誤ることはないと思っていたのだが、理由にはならないようだ。 |
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パックした自転車を預けて身軽になった。トイレでの個室で腰に塗り薬を塗り、カウンターでもらった昼食券を使ってレストラン街のとんかつ屋でカツ丼を食べる。2週間日本食ともお別れだと思い、時間をつぶすことも兼ねて、のんびり食べる。 |
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出国カウンターで出国手続きをして、日本国外へ。早速、ロンドンにいる西川さんへの土産を物色すべく免税品店に足を運ぶ。 遅れて飛び立ったとしても、コペンハーゲンで乗り次ぐ飛行機が待っているはずがない。係員にそのことを尋ねると、別の飛行機に振り替えるなどの処理を現地で行うとのことだった。 |
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我々の乗るSAS(スカンジナビア航空)は搭乗開始の案内のアナウンスがあった。SAS機より先に飛び立つはずの他の航空会社は3時間も遅れているのに、SAS機は果敢にも離陸するようだ。 |
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単に航空機の準備のタイミングなのか、それともSAS機は悪天候に強いのか、このスケールの台風の直撃を考えると2時間の遅れで済んだことをラッキーと思った方がいいのかもしれない。 離陸して雲の上に出れば台風の影響が無くなるからなのか、国際線の場合は多少の無理があっても飛び立つのだろうか。 |
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到着予定16:15に遅れること80分でコペンハーゲン空港に到着。ゲートのカウンターで日本人スタッフの指示通りに予定とは別の便への乗り換え手続きのためカウンターに向かう。コペンハーゲン空港は4年前のノルウェーサイクリングの往路で利用した空港で、通算4度目のなので、勝手はよく知っている。 |
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スカンジナビア空港のカウンターで列にならぶ。私と同様、並んでいる人は乗り換え時間が80分に満たない便でヨーロッパ各地に向かう予定だった人なのであろう。 カウンターの係員にチケットを見せ手続きをしてもらう。荷物のタグを見せろと言われたが、どこにあるのか思い出せないでパニック状態でいると、チケットだと教えてくれた。人だけではなく、荷物の積み替えの手続きもしなければならないので大変だ。結局、英国航空に乗ることになり、いそいでゲートへ向かう。 |
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英国航空の飛行機の待機するゲートに着くと、待合室に20人ほどの人が搭乗を待っていた。係員に搭乗券を見せると、ちょっと待っていろとのことで、端末機を叩いていろいろ調べている。ちょっと心配になるが、これだけ遅れたのだから、もうどうにでもなれである。 少し待たされた後、やっと搭乗開始。日本人は、私以外に女性が一人だけのようだ。2時間ほどのフライトであるが、簡単な機内食が出た。 |
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予定より1時間ちょっとの遅れで、ヒースロー空港に到着。この程度の遅れで済んでよかった。それにしても到着機が集中したのか、人が多く、通路で足止めをくらい、入国手続きをするイミグレーションに到着するのにとても時間がかかった。愛想の無いお役人に入国の理由を聞かれ、「sightseeing(観光)」と答えると、発音が悪かったのか、聞き返された。訪英する日本人の割には、汚い格好をしているのが気になるのか、簡単に通してはくれないようで、パスポートをじろじろ見ている。どこのホテルに泊まるのかを聞かれたので、ユースホステルと答え、すらすらと、湖水地方と、コッツウォルズの地名を出したら、すぐに入国のスタンプを押してくれた。 こちらも同様に人でごったがいしているラゲッジルームでパックした自転車を受け取り、カートに乗せて、出口に向かう。迎えに来てくれている西川さんは待ちくたびれただろうなと思いながら出口を通過したが、沢山の人の中にその姿はなかった。落ち着いて考えると、ヒースロー空港はターミナルが3つ有り、地元の英国航空とよそ者のスカンジナビア航空は到着ターミナルが違うのだ。西川さんはそのためにスカンジナビア航空が着くはずの別のターミナルで待っているのかもしれない。昨日、台風が来ているので、どうなるかわからないと言うFAXをファームステイ先にしておいたのだが、届いていなかったのか。 |
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西川さんがホームステイしている家に連絡をとろうと思ったら、集めた情報を印刷した紙を自宅に忘れて来ているのを思い出した。電話して家族に見てもらおうかなと思ったが、今、日本は真夜中なので、あきらめる。 両替所でポンドを手に入れ、とにかく、予約してあるハムステッドヒースYHに向かうしかないと、地下鉄の駅に向かう。切符を買おうとしたが、自動券売機の使い方がまったくわからない。西川さんに会えればすべてOKと思っていたのが予定が狂い、完全にパニック状態である。 そうこうしているうちに、西川さん登場。ほっとした。とにかくほっとした。私が乗ってくるスカンジナビア航空機はとっくに到着しているのに、私が出てこない。周りを見ると、日本からの直行便が軒並み遅れていることがわかり、スカンジナビア航空のカウンターで、私がどの飛行機に振り替えられたのかを調べ、英国航空の到着するターミナルへ駆けつけてくれたらしい。感謝感謝。 ロンドンの住人である西川さんの指示に従い、エリア内のフリーチケットを窓口で購入し、地下鉄に乗り込む。ロンドン特有の狭い地下鉄の車内で、イギリスの列車に自転車を積み込む際のルールなどの情報を西川さんから仕入れる。 |
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まず、荷物を置いて、身軽になるために、予約してあるハムステッドYHに向かう。何度か地下鉄を乗り換え、ゴールダーズ・グリーン駅に到着。私が自転車を組み立てている間に、夕食をとっていない西川さんは腹ごしらえに出かけるが、空振りに終わったとのこと。 |
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自転車を押して歩いて10分ほどで、迷うことなくYHに到着。暗くてよくわから無いが、古くて風格のある大きな建物のようだ。チェックインをして、荷物を部屋に置き、自転車を納屋に入れ、食事に出る。 ゴールダーズ・グリーン駅周辺は、レストランなども多くあるが、ちょうど閉店の時間らしく、どこへ入っても断られる。地下鉄で西川さんのホームステイ先のある最寄りの駅ベルサイズ・パーク駅まで行けば開いている店があるだろうと、地下鉄に乗り込む。 ベルサイズ・パーク駅は、地上にホームがあるゴールダーズ・グリーン駅とは違い、ずいぶん深い場所に駅があるらしく、エレベーターで地上に出るのだ。日本では信じられない。ラッシュアワーはどうなるのだろうか。 あいにく、ベルサイズ・パーク駅周辺でもこれといった店はなく、結局、ケンタッキー・フライドチキンで何やらのセットを購入し、道端のベンチで食べる。現地の情報などいろいろ話しをうかがい、1週間後にブラッドフォード・オン・エイボン(以下B-O-Aと略)で開催されるイベントでの再会の約束をして別れる。 |
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この時間になるともう上りの地下鉄はないらしく、駅の改札のお兄さんに、どこまで行くのかを訪ねられた。「ゴールダーズ・グリーン」と言うと、にっこりして通してくれた。 エレベーターで深く潜行しプラットホームへ。さすがにの時間になると、運転間隔が長くなるらしく、地下鉄はなかなか来ない。ホームの広告を眺め、時間を潰す。 やっと来た地下鉄に乗り込みゴールダーズ・グリーン駅に到着。西川さんがいろいろ気を使って教えてくれたので、難無くロンドン地下鉄の一人旅も終了。千鳥足の酔っぱらいしか歩いていない道をYHまで戻り、呼び鈴を押しドアを開けてもらう。24時間オープンのYHなので助かる。部屋の他の人を起こさないように着替えてベッドにもぐりこむ。 それにしてもいろいろ有って、長い一日であった。それもそのはず、よく考えたら、今日は35時間も有ったのだ。今日一日のことを思い出しながら眠りにつく。 |