バンフからジャスパーに向かうアイスフィールドパークウェイは全線国立公園内を通っているため、始点終点と途中のレイクルイーズ周辺を除くと沿道には民間の施設は少なく、最低限必要と思われる間隔でガソリンスタンドや食料が調達できる店がある程度。宿泊施設も歩く人にはYH、車にはロッジが最低限あるだけだ。看板等視界をじゃまする物は最低限の物しかなく、地図を便りにYHの場所を見落とさないようにと慎重に走る。控えめに立てられたYHの看板を発見したが、例によって建物は道から奥まったところにあって、周囲の景観が損なわれないようになっている。
モスキートクリークYHに着くと管理人らしき女性が建物の修復をしているらしく脚立に登って作業をしていた。今日泊まりたいと言うと、昨日のYHの管理人とは違って愛想がいい表情をしてくれた。
このYHには新築のログハウス風の円形のラウンジがキッチンのある建物のとなりに立てられている。この建物は日本でも見かける(自宅建て直しのためモデルハウスで見かけたことあり)カナダ産の楓の木でできた窓枠を使っていて、とてもソフトな感じだ。部屋の中にはベンチ状の椅子が壁際に固定されていて、真ん中に大きなストーブがある他はなにもない。
一人でラウンジにいるとおばさんが入ってきて話し始めた。外のほったて小屋を指さし、あそこのスーナは最高だという様なことを言っている。よく話を聞いているとサウナのことを言っているようで、小屋の中のストーブに薪をくべ、暖まったら小屋の裏を流れる川で水をくんで浴びるのだと教えてくれた。こんな山の中なので昨日泊まったコーラクリークYH同様、このYHもシャワーなどの設備はないようだ。
自分もサウナに挑戦してみようと、食事が済んだ後、まだ明るい内にねまき用にと用意した半ズボンだけをはいて真っ暗な小屋の中へはいる。すでに中は高温状態で体から汗が噴き出す。少し息苦しいのと、薪をとるために外へ出たり入ったりしているうちに完全に「蒸し豚」が出来上がったようだ。教わった通りにすぐ裏を流れるモスキートクリークから水を汲み簡易シャワーのタンクへいれる。シャワーからちょろちょろ流れる水で体の汗を流すととてもすっきり状態。
サウナと同様、ほったて小屋状態のベッドルームに入るとさっきのおばさんが寝ていた。このYHはベッドルームは男女の区別がないようだ。そばに有名な観光地があるわけでもなく、アイスフィールドパークウェイを行く人はほとんどが通過してしまう様な立地条件に建つYHである。今日の泊まり客は、このおばさんと自分の2人だけだし、男女を分けるほどの客が来ることはないのだろう。サウナで暖まった体を粗末な作りの2段ベットに横たえ深い眠りに入ったのであった。