ここからは幹線をはなれ、オスロに向かう鉄道沿いの道をダーレの町に向かう。今日の目的地であるヴォスへは、標識にならって幹線を行くより、こちらの方が何故か近い。フィヨルドからはかなり高いところを通るこの幹線道路から別れ、かなり下って鉄道沿いの道を行く。
交通量が少ない緑の中の道をフィヨルドを見ながら快適に走っていると、トンネルに出くわした。いやな予感が的中しトンネルの中は真っ暗だ。青ざめて地図で確認するとこのコースにはいくつかトンネルがあり愕然とする。唯一の明りである単三電池2本の小さなミニマグライトを専用のベルトに着けて頭に巻き、行くしかないとあきらめてトンネルに入る。本当にトンネル内は真っ暗で、途中まで行けば何とか出口の明りが見えるのでそれをたよりに走るしかない。数百メートルのトンネルを冷や汗をかきながら2つほどクリアーした。
3つめのトンネルは1km以上あり、おまけに路面は砂利だ。中で舗装工事をしていようで、入口付近には工事車両が止まり、トンネル内に騒音が響いている。トンネルの内壁から数十センチ張り出した反射版が数メートルおきに設置してあるので、それに貧弱なライトの明りを当て、何とか方向を確保するしかない。恐る恐る進んで行くと、いきなり壁にさえぎられた。ほとんどパニック状態で自転車を降り、明りで周囲を照らし確認すると、思ったよりトンネルはカーブしていて、片側の壁にある反射版2つをトンネルの両サイドにあると勘違いしたようで、間にある壁に突っ込んでいたわけだ。まだトンネルに入ったばかりでこんな始末で、先が思いやられる。
自転車を押してとぼとぼ歩いて行くと工事の明りが段々見えてきた。こんな明りでも暗闇の中では助かる。希に通りかかる自動車の明りもこんなにもありがたいと思ったことはない。工事をしている人に変な目で見られつつ、今度は出口の明りを目指してまた真っ暗闇の中に入って行く。出口の明りが見え、トンネルを出たときには、ぐったりしてしまった。いったいトンネルを抜けるのにどれぐらいの時間がかかったのだろうか。たったの数分だったのかもしれないが、1時間ぐらいに感じたトンネルだった。