観光シーズンの過ぎた現在、唯一食事の出来る所であるユニオンホテルに向かうため、着替えて宿を出た。ホテルは展望台の方に少し登ったところに有り、かなり高級なホテルであった。フロントで恐る恐る食事がしたいと言うと、レストランの夕食の準備が整うまで、あと30分程あるとのこと。
ホテルの周りを散歩がてらにうろうろしていると、またさっきのフランス人アベックの車が止まって話しかけてきた。彼らも夕食に来たそうで、時間を教えてあげると、あとで一緒に食事をしようと私に告げて走り去った。
レストランの準備が整ったので、ちょっとしたドライブから戻った彼らと一緒に席に着く。メニューの内容はよくわからないが、ホテルの高級感と釣り合った料金のようだ。彼らも同感のようで、同じ高いのであれば、店の人の勧める(日本で言う)バイキング料理はどうか、という話になった。どんな内容であるかを見に行くと、土地柄、海老やカニなどの高級な魚介類はもちろんのこと、ステーキ等の暖かい肉料理ももりだくさんで、ケーキやデザートを含め全てのものが揃っているという感じだ。3人は顔を見合わせてうなずき、それにすることに決まった。
あまり欲張らず、メインを決め、サラダやパンと共にバランスよく食べ始めるが、そんな上品な食べ方は最初だけ。中盤以降はビールをお代わりして、わけのわからない食べ物を少しづつ取ってきて平らげるというパターンで苦しくなるまで食い続けた。一人旅であるのと、食文化の違いや、物価高のために自粛気味の食生活が続いていたが、今はやかましいハイエナと化している。味に関しては大味の物も多く、全て日本人好みの味と言うわけには行かないが、まあまあ満足出来るものであった。
フランス人アベックの名は男性がステファンで女性がアネットという。実は彼らは昨日正午ごろに滝の見える(はずの)展望台で会っているのである。雨の中で私がスイス人アベックサイクリストと間違えて挨拶したのは彼らであった。はずかしながら、なれなれしく話しかけてきた理由がやっとわかった。彼らに確認すると、なんだ知らなかったのかというようなリアクションで呆れていた。彼らはノルウェー第2の都市ベルゲン(私の今回の旅の最終目的地)でレンタカー(ステファンお気に入りのミツビッシ)を借り、ノルウェー南部をくまなく回っているそうだ。一緒に彼らのロッジに行き、地図を見ながら旅の話をすることになった。
ロッジで話をしているうちに、明日は一緒にダールスニッパ展望台に行くことになった。自転車を車のトランクに乗せ、展望台まで登ってくれるというので、お願いすることにした。ちょっと情けないと思ったが、今までの天候と道の状態を考えると、開き直るしかななさそうだ。