まだまだ先と思っていたら、YHの看板が右手に見えた。目印の工場も右手にあり間違いなさそうだ。諏訪湖とは反対方向にかなりの角度の道を登って行く。暗い中に見覚えのある十字路の角に黒い木造のスワコYHがあった。ここが去年北緯36度線サイクリング前編を終えた所で、その時に後編の始めにはここに泊まろうと心に決めたのだった。
スワコYHは五街道時代は茶屋(料理屋)として使われた立派な木造建築の建物を使っている。しかし、来月(1994年10月)でYHはこの建物を去り、今までペンションとして使っていた建物に移る。今日が今月最後の週末であり、YHの旅好きな連中がたくさん泊まっていた。私もこれに合わせて予定を早めた。
このYHは夕食の提供はないので、諏訪湖岸まで降りて行きステーキハウスで食事をとる。このYHおすすめの店のようで他にも泊まり客のような顔ぶれが見える。YHに戻りビールで気持ちよくなったところで新築の風呂に入る。この建物は斜面に建っているため裏方にある風呂は張り出している。窓を全開にすれば日のあるうちはさぞ眺めがいいだろう。
みな居間に集まってお茶をすすりながら思い思いの話をしている。岐阜から車で来たという二人組の青年に声をかけるとこの付近の道の様子を事細かに教えてくれた。彼らはただ者ではない。車でそこらじゅうの道を走り回るそうで、景色や季節の草木を求めて地図に載っていない道に入り込む。この付近からこれから向かう木曽にかけての道の様子を事細かに聞くことが出来た。ただ、動力付きの乗り物であるがゆえに、標高差やピークの位置だけは正確さに欠けるようだった。