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2日目に越えようと思っていた三国峠もここからでは距離的に余裕がないので今日こそ秩父湖にある秩父YHに泊まろう。中学生の時に来て以来、秩父には来ることが無かったので、今日はのんびり観光も兼ねてポタリング気分で走ることにする。 まず地図で見て気になっていた住宅地のへりにそびえる小高い山を貫く小さな峠。ここから市内に下ることができるので行って見ることにする。ホテルからなるべく旧街道と思える裏道を通って国道299号を横切り、ひたすら南西方面に向かうと池のある公園に出た。前方には西武秩父線の列車が横切るのが見える。ほどなく右手に例の小さな峠があった。 想像していたとおり、しっかり切り通しになっていて、秩父盆地が一望出来る。ゆっくり下って行くと途中に牧水公園と銘打った公園が下りの斜面にあった。若山牧水の歌碑や水車小屋などがあって、憩の場になっている様だが、メンテナンスがされていないので荒れた感じになっている。 |
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秩父盆地の南東のへりをのろのろ走って行くと途中に秩父霊場の札所が何ヶ所かあった。そのうちの一つ野坂寺にお参りをして旅の安全を祈る。 ついに秩父盆地の果てまで来た。秩父鉄道をまたぐ歩行者用の陸橋を越え、住宅地の中を走り国道140号に下った。もうここからはポタリング感を味わえる裏道などない。中学生時代に自転車で遠出したときの最終地点であった鍾乳洞のある浦山口の看板を見て17年ぐらい前のことを思い出す。 |
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国道に出たとはいえ連休が開けたためか、車の交通量も少なくなり走りやすい。連休中はにぎわったと思える秩父鉄道の終点である三峰口駅も人気がなく、静かなものだ。水を補給して駅前のベンチで小休止。 |
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だんだんと両脇の山が迫ってきて徐々に細くなてきた川沿いの国道を登る。左手に三峰山に登るロープーウェイの乗り場の入口が見えてきた。ここから数百メートル川の対岸を歩くとロープーウェイの乗り場がある。昔家族で旅行に来たとき、祖母がここを歩けなくて三峰神社参拝を断念したことを思い出した。 |
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村役場がある大滝村の中心部の落合の集落をすぎ、中津川林道方面への入り口を過ぎると本格的な登りが始まる。途中、2つの大きなつづら折れで道は川に別れを告げ、ダムの高さに上り詰める。程無くダム直前の駐車場に到着。 近くの食堂の2階でダムを見ながら食事をする。なにやらテレビでよく紹介される食事のおいしい店らしい。座敷で足を投げ出してくつろいでしまい、コーヒーまで注文してのんびりする。今日は、この近くの秩父YHに泊まる予定なので、時間はたっぷりあるのだ。 ここからは一方通行の為の信号機のあるトンネルを経て秩父湖岸に出れるのだが、歩行者用にとトンネルの外に小道がある。自転車で小さな秩父YHの看板を横目に小道を通り秩父湖に出る。相変わらず出来の悪いYHの地図に従い、秩父湖を左手に見て数百メートル行き、登り口らしき道を登っていると、バンがすれちがいざまに止まった。バンから顔を出した人に「YHへ向かっているのですか?」と尋ねられた。こちらが予約していないことがわかると、今日YHは閉まっていますよとそっけなく伝え、去って行った。いくら宿泊者がいなくても、休館日としてYHのハンドブックに明記していない以上、閉めてしまうのは納得行かない。もちろんこちらも予約していなかったので宿泊を断られても文句は言えないが。 せっかく登ってきたのだからとちらっと秩父YHの建物を見た後、同じ通り沿いにたまたまあった民宿に飛び込む。宿のお母さん「今、お父さんがいないので」と受入を先伸ばしにしている内に、こちらが1人だとわかると、ほとんど無理だというようなことを言い始めた。近所の親類の経営する民宿にも問い合わせてくれたが、やっぱりだめ。あきらめてまったく別な所を当たろうと、昼食を取った食堂まで戻った。 これはもう地元の人を頼りにするしかないと、食堂のおばさんを捕まえて聞くことにする。この付近の宿泊施設は今はやっていないとのことで民宿が載っている大滝村の観光パンフレットをくれた。中津川林道へ向かう道との分岐付近の落合に民宿が3軒あり、中で一番大きそうなところに電話すると意外とすんなりOKであった。 食堂のおばちゃんにはお世話になったついでに荷物を預かってもらい、工具袋のみフロントキャリアに縛り付けて三峰山に向って出発した。 |
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トンネル同様、交互通行の細いダム上の道を信号が変わらないうちに急いで通過する。ここからダム湖にそそぐ川に沿って登って行くわけだが、舗装状態がひどくて閉口する。 |
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山頂までの行程の1/3ぐらい来たところで、道はヘアピン状に折れて谷と別れ、山への登りとなる。地図ではここから有料道路の表記になっていて、舗装状態は格段によくなる。 空荷と言うこともあって、とても快調に標高を稼ぐ。車も少なく、景色もいいので、登りの辛さはあまり感じなくなっている。ちょうど休憩したくなったところに展望台があったので観光地価格のスポーツドリンクを自販機で購入し小休止する。 地図に記されている料金所を通ったはずであるが、それらしきものがない。快調に登っていると、道がふくらんでいる所があった。ここが料金所跡だとすると、有料道路ではなくなっているということだろう。 |
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駐車場のゲート脇をゆっくりと通り抜け、細長く続く駐車エリアの奥まったところに自転車を止める。この先、まだ道路が続いているようだが、業務用車のみで一般の車は立ち入れないようだ。 |
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ガクガクになった足を引きずって、三峰神社の参道へ向かう。三峰山から北側の山々が望める展望台に立ち寄った後、大きな鳥居をくぐる。三峰山のほぼ山頂に位置する三峰神社は大きな木々に囲まれていた。社務所が改装中ではあったが、社は堂々とした風格をそなえた立派なものであった。 |
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来た時とは違う最短のルートで駐車場まで戻る。 舗装状態のかなりいい元有料道路区間を快適に下る。車が少なくとても静かで、景色もダイナミックだ。 |
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例によって、ダム上の交互通行の信号に引っかかった後、車の後を追って同様に交互通行のトンネル内を通り抜ける。中では車道の合流かあるので一瞬緊張しながらの数十秒だった。 食堂のおばさんの言葉のとおりもう食堂は閉まっていて、預けた荷物は店外の角に置かれていた。さっさと装着し、引続き下りの再開だ。 |
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来るときに通った道をそのまま戻る。民宿みたけは落合の大滝村役場を過ぎたところにあった。ちょっと玄関の大きな普通の民家と言った感じで、案内された2階の部屋は磨りガラスで2面が囲まれたちょっと落ち着かない部屋だ。 廊下を挟んで隣の部屋には馴染の泊まり客がいるようで、宿の主人との話声が聞こえる。風呂に入り、どうと言うことのない夕食を済ませてテレビを見て過ごす。一人で民宿に泊まるのはとてもつまらないことだとつくずく感じる。 |