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| 宿泊したLaune Valley Farm Hostel |
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朝起きて、朝食を食べに前日指定された二階の部屋に向かう。ほとんどの人がキッチンで朝食を自炊しており、ここで朝食を食べるのは私だけ。少々寂しい。それにしてもスゴイ量だ。朝からこれだけの数のパンは食べきれない。もちろん残さず食べるためにテーブルに載っているわけではないだろうが。 昨日、洗濯機で乾燥までされた洗濯物を取り込んで、荷造りをする。なぜか手袋だけがない。と思っていると、肝っ玉母さんが手袋にはビニールのコーティング(滑り止めの付いた軍手だ)がされていて、それが溶けるおそれがあるので、乾燥機からは外したとのこと。 オーストラリアから来て、数人のグループで泊まっている、中年のグループは、サイクリングでアイルランドを廻っているようだ。ベテランのサイクリストでもあるリーダーの人(70歳ぐらい)が綿密な計画を立て、引率しているらしい。私の自転車を見て珍しがるので、モールトン博士の作った自転車だというと、話に聞いたことがあるとのことで、サスペンションの効果を知るために試乗をし始めた。 彼らのメンバーの女性の乗る自転車の前の変速機の調子が悪い。私も調整には協力をしたが、どう調整してもちゃんとチェーンがギアに乗ってくれない。プレートが削れ、大きくへこんでいて、調整ではどうにもならないようだ。きっと、チェーンが変速機に当たった状態で乗り続けたために、部品が削れてしまったのだろう。ここまで削れるとなると異音がでていたはずだから、その時点で調節しないと大きな障害につながる。結局、キルオーグリンの町の自転車店で修理して貰うとのことで、持ち主の女性の夫が走って出かけていった。 |
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朝起きたときはそこそこ良い天気であったが、例によってだんだん天候が悪くなってきた。今回のサイクリングの終点を予定しているトラリーへ直接向かう道路の分岐、キャスルマインの町にさしかかるかかからないかの所でついに小雨が降ってきた。とりあえず、雨具を取り出すほどの雨量ではないので、がんばって走っていると、雨は上がってしまった。 ディングル半島に入って、すこぶる舗装の状態が悪くなってきた。ケンメアのパブの女将さんの話を思い出した。確かディングル半島への道の状態は良くないとのこと。このままの状態がどのぐらい続くのか、不安であるが、まさか通行止めのようなことはないだろうし、時間はあるので、なんとかなるだろう。 |
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徐々に視界が開け、左側に海が見えてきた。程なくインチビーチに到着。この辺になると、舗装状態はそれほど悪くなくなってきた。浜への入り口で小休止していると、後ろからサイクリストが来た。少々言葉を交わし、彼を見送って、せっかくだからと砂浜を歩いてみる。インチビーチは映画の撮影で使われたことでも有名な浜らしいが、さすがに海水浴シーズンではないし、天候も良くないので、人は少ない。 インチビーチを過ぎると道は少々上りになり、展望が開けた。観光バスが止まっており、観光客はバスの外に出て、インチビーチを見下ろしている。中には日本人らしき人も一人いた。 その後、道はほぼ直角に右折して内陸に入り、海岸に流れ込む川に沿って登ってゆくようになる。内陸を斜めに横断してくる幹線道路と合流したおかげで、道の状態はかなり良くなったが、アップダウンがきつくなってきた。 |
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いくつかのアップダウンを過ぎると、道は地図でもはっきり解る通り、ほとんど東西に水平に一直線になる。その道はディングルの町の手前の山に阻まれ、その山の海側にぐるっと迂回してゆくのだが、正面にその山が見えたところあたりから、道は工事中になり、舗装がはがされている。前方に見える山への登りと、悪路と、工事車両の三重苦をなんとか切り抜け、ディングルの町に到着。ディングルは著名な観光地だけあって、かなり賑わっている。港のそばにあるインフォメーションに寄る。 インフォメーションから出てくると、インチビーチで先に行ったサイクリスト氏と遭遇。B&Bに荷物を置いて、身軽になって、あちこち廻るそうだ。私は、今日はディングル半島の突端、ドンキンにあるYHに泊まることにしているので、彼の荷物の少なさが少々うらやましい。 港の正面のお店でフィッシュ&チップスとコーラを購入し、港のベンチで遅い昼食とする。それにしても、この魚のフライはすごいボリュームだ。ポテトのフライも大量である。 ディングルの港を左に見て、スリー・ヘッド・ドライブというルートを行く。一度内陸に入った道は、再び海沿いに出て、青い海を視界の半分に捉えた状態で走る。 柵のある道路と海の間は、牧場となっていて、海に落ちそうな斜面で、羊が飼われている。馬が一頭草をはんでいたので、休憩がてらに望遠レンズを取り出し、ずいぶん時間をかけて青い海を背に写真に納める。 |
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なにやら、観光ポイントと思える標識があったので寄ってみることにする。 自転車を道端の柵に立てかけ、道から直角にダンベグ・フォーとゲートを入ると、左側にひっそりと料金所があった。1ポンド支払って、海沿いにずんずん向かってゆくと、砦があった。そう、フォートとは砦のことだ。それほど大きな建造物ではないが、石を積み上げて作られ、人が何人か隠れることのできる部屋ができている。片側は、海による自然の要塞となっていて、周囲の地にもきれいに石が敷き詰められている。一通り見た後、ダンベグ砦を後にし、岬を回り込むと前方に海に突き出た半島が見えてきた。 |
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海沿いの道が少々きつい確度で右に曲がるところに、車が駐車できるような空間があり、マリア様の像が道の壁に埋め込まれている。ここがスリー・ヘッド・ドライブの名前の由来である岬、スリー・ヘッドのようだ。 セルフタイマーで記念写真を撮ろうとカメラを準備していたら、車で来ていた女性がシャッターを押してくれるとのことで、お願いすることにした。シャッターを押す事だけをお願いし、自転車と共に立っていると、ピーピーと音がしている。セルフタイマーの指定を切り忘れたのだ。その女性が困っているので、焦って「スチル!スチル!!」と叫んで、そのままカメラを構えていてもらい、数秒後にやっとシャッターが降りた。彼女は少々すまなそうにしていたが、私がセルフタイマーを外さなかったのが原因だ。「ノープロブレム」とにこにこ笑って、お礼を言って別れた。 |
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スリー・ヘッドのすぐ近くにある海に付きだした小さな半島は魅力的だったが、ビジターセンターにも行きたいので、とりあえず、ドンキンYHに向かうことにする。 まばらに住宅が点在するだけのドンキンの集落に入り、中心部を過ぎるとYHはあった。白い色の、すっきりとした飾り気のない建物だが、そこそこの大きさがああり、設備は良さそうだ。 入り口を入ったところの受付で管理人を呼びだし、チェックイン。建物の中は、少々複雑な構造をしているが、とても新しく、内部も白色で統一されていて、清潔感あふれる建物だ。バリンスケリッグスYHで、同泊の女性達が口を揃えて、ドンキンYHは、とてもクリーンで・・・と言っていたのが理解できる。 まだ新築の臭いのする部屋のベッドに荷物を置き、自転車置の置き場を案内して貰い、これからビジターセンターに行きたいと告げると、もう閉まっているとのこと。明日は早く出発の予定なので、残念ながら諦めるとする。 それではと、通過してきた半島ドゥンモア・ヘッドに行くことを相談すると、半島の一番高いところには、スタンディング・ストーンがあり、周囲は歩けるようになっているとのこと。海に落ちないようにとのアドバイスを受け出発。 YHを出ようとしたところで、キラーニーのヘッド・オブ・ギャップス峠で出会ったデンマークから来たという女の子が自転車に乗って現れた。またも軽装。本当に荷物を持っているのだろうか。 来た道をそのまま戻らず、閉まっているというビジターセンターの建物を横目に見て、近道を試みる。道は、いきなり小さな湾へ流れる川の近くまで下ってとぎれた。しかし、歩いて渡れるような歩道があるので、空荷の自転車を担いで、強行することにした。川自体は橋が架かっていないが、水量が少ないので石を伝って向こう岸にたどり着いた。あとは、上の道まで担ぎ上げるだけである。 |
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| | Dunmore Head岬からGreat Blasket島を見る |
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来たときの道に合流して、下ってきた道を登ると、半島への入り口を入ったところに駐車場があり、その先に海岸に降りる道が続いているので、行ってみることにする。急な角度で海に向かって落ち込むように下ってゆくと、小さな砂浜があった。道の切れ目には黒い自家用車が一台止まっていて、看板には遊泳禁止のようなことが書いてある。誰もいない砂浜に愛車を持ち込んで写真を撮っていると、先ほどの車の主か、あまり観光客らしくない一人の男性とすれ違った。 駐車場に戻って、今度は半島を歩く準備をしていると、先ほどの車が来て、さっきすれ違った人が降りてきて話しかけてきた。彼は、オーストラリアから来て、レンタカーで観光しているとのこと。あまり見かけないスタイルの観光客だなと思っていると、これから半島の周囲を歩くとのことなので、一緒に行くことにした。遊歩道を登っていると、数人の観光客とすれ違った。その時彼は英語で何か質問しているようだったが、内容はよくわからない。こっちでよいのか?程度の質問だろう。 ドゥンモア・ヘッドの先端付近に行くと、海に向かって切り立っていてかなり恐い。視線の先には、グレート・ブラスケット諸島の島々が連続して見え、とてもダイナミックな景観だ。半島の一番高いところに行くと、雷よけか、コンクリートでできた小さな非難小屋があり、その側には、YHの管理人が言っていた古代人の遺跡であるスタンディング・ストーンがあった。 頂上で360度のパノラマ写真を撮り、オージーの彼と下る。歩きながら話すと、彼は、ディングルの町に宿を取っているのでこれから戻るが、乗せていってあげようかと言う。私はあそこのYHに泊まると言いながら、ドンキンの町の方向を指さすと、残念がっていた。それから、私の自転車が車輪が小さいので、おもちゃの自転車のようだとのこと。世界最速の記録を所持している自転車に対して、おもちゃとは失礼だが、自転車に対する知識がないのだろう。これぞ羊の皮をかぶった狼だと独り言を言う。 下りの途中で彼とは別れ、もうちょっと別な方向に回り込んで、海を見ながら写真を撮り、駐車場に戻り、YHへの帰途につく。ドンキンの集落で、食事のできるところはないかと、キョロキョロしながら走っていると、真新しいレストランの看板が目に入った。少々大きめの民家のようで、入り口に自転車を止め、庭を横切って、ドアを開けると中は立派なレストランである。たくさんの客が入って、ほぼ満員状態だ。地元の人だろうか、それとも、観光できてディングルの町に宿を取っている人たちなのだろうか。もし後者であれば、かなり評判の高いレストランと言うことだ。席に案内され、なにやらよくわからないが、モンクフィッシュとメニューに書かれた魚料理と、グラスワインを注文する。食事の出てくるのを待っていると、家族できている子供達が私のことをじろじろ見ている。一人でレストランに来ている奇妙な格好をした東洋人となると珍しいのだろうか。それにしても、お店は大繁盛で、なかなか私の頼んだ物は出てこない。 |
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ドンキンの集落で、食事のできるところはないかと、キョロキョロしながら走っていると、真新しいレストランの看板が目に入った。少々大きめの民家のようで、入り口に自転車を止め、庭を横切って、ドアを開けると中は立派なレストランである。たくさんの客が入って、ほぼ満員状態だ。地元の人だろうか、それとも、観光できてディングルの町に宿を取っている人たちなのだろうか。もし後者であれば、かなり評判の高いレストランと言うことだ。 席に案内され、なにやらよくわからないが、モンクフィッシュとメニューに書かれた魚料理と、グラスワインを注文する。食事の出てくるのを待っていると、家族できている子供達が私のことをじろじろ見ている。一人でレストランに来ている奇妙な格好をした東洋人となると珍しいのだろうか。 それにしても、お店は大繁盛で、なかなか私の頼んだ物は出てこない。 出てきた料理は、はとても手が込んでいて、美味しく、大満足。ワインでよい気分になって、支払いを済ませた後、店の人に聞くと、まだ出来手間もないレストランだとのこと。店の名刺をもらいがてらにとても満足したことを伝える。 |
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レストランを出て、少々薄暗くなってきたなと思い、時計を見ると、もう10時前だ。そうか、これだけ西に来ると日没が遅い。まだ早い時間で、明日の準備やら旅の記録の整理やらできるかと思っていたのは誤算であった。 ラウンジには、例のデンマークから来た女の子がいたが、真剣に読書をしているようなので、会釈しただけ。どんな旅をしているのか、話を聞きたかったのだが残念である。 |