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朝起きると、昨日痛めた手首が痛い。軽い捻挫のようだ。持病の腰痛のために持ってきた湿布を半分に切り、手首に張り、それを固定するために、筒状の伸縮ネットをかぶせる。 昨日買った食材で朝食を作って食べ、同時に昼食も作る。両方とも、ハンバーガーバンズにベジタブルスプレッドを塗り、ハムやチーズ挟んだだけの物だ。 |
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ホステルを出て、町の中心部向かうとインフォメーションが有ったので寄る。ちょうど今回のサイクリングルートである、リング・オブ・ケリーとディングル半島が描かれた鳥瞰図があったので、購入する。山々が立体的に描かれていて、どこが峠であるかなど一目瞭然だ。めいっぱい細く巻けば、シートピラー(サドルの支柱)の中に入れることのできる大きさなので、走行中邪魔になるようなことはないだろう。 いざ、ケンメアの街を後にしようと、インフォメーションを出たところで、2人の女性サイクリストが現れた。彼女らは競技用のロードレーサーに乗っていて、スタイルも競技用のジャージで決めている。こちらでも自転車の趣味は盛んなようだ。軽く挨拶をして出発しようと思ったら、1人の女性が目にゴミが入ったようで、2人ともそれにかかりっきりで対応していて、声をかけるタイミングを失ってしまった。 昨日来た道をそのまま戻り、昨日は通り過ぎた、ケンメアの入り口の分岐点をリング・オブ・ケリー方面に行く。路面の舗装状態は悪く、振動が伝わってくる。我が愛車はこのような路面のためにサスペンションが付いているが、それが無かったらこんな程度では済まないだろう。昨日痛めた手首に振動が伝わって痛みを感じる。 |
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地図で解る通り、左側に海が見えてきた。道は森の中を走ったり、眺望の効く海沿いに出たり、とても抑揚がある。天候が良く、森がとぎれると、強い日差しを感じる。途中、大型車が通るのが玉に瑕であるが、交通量は少なく走りやすい。 郵便局と数件の家が見えるだけの小さな集落をいくつか過ぎ、スニームという村に到着。このスニームは近年「かわいい村コンテスト」で大賞を受賞した村であるとのことだ。道路沿いには数軒のお店が並び、小川が流れているとてものんびりした集落だ。お店で飲み物などを買い、ベンチで朝作ったランチを食べる。 対向車線の道脇にサイクリストが休憩していたので手を振って挨拶し、スニームの町を後にする。ここからは地図ではっきり解るレベルの登りとなる。 |
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たった標高120m程度であるが、地形的には峠である。もちろんこの峠に名前など無い。峠を越えても海岸線のコースには違いないが、一時ではあるが、海に向かっての下りを楽しむことになる。 |
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峠を下り終えると、リング・オブ・ケリーの道はぐっと海に近づいてきた。1軒のホテルがあり、リゾート地のようになっている。とても天気が良く、浜の岩場には人が何人かいて、皆のんびりしているので、自転車を止めて休憩することにする。岩場から海をのぞき込むと、引き込まれるようなどこまでも深い青の世界。とてもきれいな海水である。 10分ほど休憩して出発すると、反対側から真っ白なタンデム自転車に乗った人とすれ違った。荷物はほとんど積んでいないので、リゾートに来た人が借りているレンタサイクルであろう。 今度は本格的な登りである。といっても海岸線である標高0mから200m程登るだけだ。ぐいぐい標高を稼ぐ。途中、通過した小さな集落には、ホステルがあるようで、地図に赤い△印が付いている。このペースなら今日はもっと先まで行けるので、この集落に泊まろうとは思わない。 天候が良く、道路の簡易舗装のアスファルトが解けて、少々タイヤにこびりっついているのが気になる。特に、問題の前輪のタイヤの傷には、アスファルトが接着剤のようになって小石が食い込んでいるのが気になる。 |
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海を背にするかたちで標高を稼ぎ、山に突き当たるところで、左に折れると勾配が緩くなった。とても展望の良いところにレストハウスが見えてきたのでここが峠のピークかと思ったら、さにあらず。しかし、休憩無しで登ってきたので、休憩がてら、自転車から降りて、写真を撮る。さあ、峠に向かってもう一踏ん張りだ。 |
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すぐに峠に到着。峠は大きな駐車場があり、真ん中にマリア様の像がある。峠を抜ける風が強い。 とても良い展望だ。先ほどのレストハウスからの展望同様、複雑な海岸線と、深い青の海に点在する島々。峠のすぐ下には、羊たちがいる。望遠レンズを持ち出し、じっくり時間をかけて写真を撮る。 アベックのサイクリストが峠に到着したので、少々話をする。彼らはマウンテンバイクに沢山の荷物を付け、私とは逆回りでリング・オブ・ケリーを走っているとのこと。私の自転車を見てしきりに珍しがっていて、写真まで撮っている。 ここからは、今まで走ってきた外海の海岸線と別れて、バリンスケリッグス湾の海岸線沿いに下ることになる。途中、湾を見下ろす展望のすばらしい場所に出た。カメラを向けて、愛車をファインダーの中に入れる。 |
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峠を下りきると、ウオータービルの集落だ。ここは、海の近くに大きな湖があり、その出口となっているので、名前からも解るとおり、水に囲まれた集落である。喜劇王チャールズ・チャップリンの別荘があることでも知られている町らしい。 売店を探して、ミネラルウォーターとアイスキャンデーを買い求めて、休憩を取る。町のメインストリートの分岐点には、立派なケルティック・クロス(ケルトの十字架)があり、愛車と共に写真に納める。 |
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ウオータービルの集落を出て、もう数kmリング・オブ・ケリーを走り、左に折れてスケリッグ・リングに入る。このスケリッグ・リングはリング・オブ・ケリーよりも、もっとイバラ半島の突端を通るルートで、リング・オブ・ケリーのオプション的なコースになっているようだ。 リング・オブ・ケリーから別れてすぐの所は、バリンスケリッグス湾に注ぐ川が流れる湿地帯で、周囲は見渡す限り草が生い茂るだけのなにもなにもない道で、舗装状態はより悪い。地図に記載があるので、近い道を選択したら、やっと車が1台通れるような程度の細さの道に入り込んでしまった。ウオータービルの対岸に回り込むところで、比較的太い道路と合流し、程なくバリンスケリッグスの集落に到着。こんな所にYHが有るのかという程度の大きさの漁村だ。 海沿いの道を右折して、海を背に少々登ってゆくと、バリンスケリッグスYHがあった。建物にはピンク色を基調としたサイケデリックなペイントがしてある。併設の雑貨屋兼食料品店がYHの受付のようで、店のオバチャンが受付をしてくれた。2階の部屋に入り、荷物を運び入れ、もう一度受け付けに行き、買い物をする。今度は、お店の子供が相手をしてくれる。この辺にレストランなど有るかと聞くと、無いとのこと。店内を物色すると、フリーズドライのライスや、カレーソースとおぼしき物があるので、野菜や肉などあれこれ買い集めてカレーライスを作ることにする。 キッチンの設備はまあまあ充実しているようだ。泊まり客は私だけなのに、冷蔵庫を覗くとあれこれ食材が入っている。バターを少々失敬して、タマネギを炒め、カレーライスをなんとか作り上げる。 車が到着して女性2名がYHに入ってきた。どおやら、連泊のようで、作り貯めし、鍋ごと冷蔵庫にストックしてあった料理を温め直している。私がカレーライスを食べ終わり、デザートを食べているときに、彼女らは食事を開始したが、沢山作りすぎて余っているとのことで、私に食べ物を勧める。残念ながら満腹であったので、丁寧にお断りする。 彼女らは英国人で、アイルランドを車で旅をしているとのこと。これからディングル半島に行くというと、半島の突端にあるドンキンYHはとても清潔で設備も充実している良いYHだとのアドバイスをしてくれた。 |