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今日は、リング・オブ・ケリーより、半島の先の方を通るルート、スケリッグ・リングを走ってから、リング・オブ・ケリーに戻る予定だ。万が一、通行止のような事がないように、YHのおばさんに別れの挨拶がてら、これからスケリッグ・リングを走りに行くことを伝える。反応を見る限り問題ないようだ。 同泊の女性達が出発の準備をしているので、とてもサイケデリックなペイントのYHの建物の前で写真を撮ってもらって、出発。朝起きたときは快晴だったにもかかわらず、ずいぶん暗い雲が立ちこめてきた。 集落を出るとすぐに車が1台ほどの幅の道になった。等高線がぎっしり詰まっている地図でわかる通り、ほんの小さな峠のきつい登りを一瞬にして登り切り、尾根の向こう側に出た。 |
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今にも雨が降り出しそうな天気の中、海岸線を少々走ると、今度は、先ほどの3倍ほどの高さの峠が見えてきた。ここから峠までは、2箇所ほど直角に折れ曲がった直線的なルートが木々に隠れることなく見える。 最後の角を曲がったら、これ以上の直線は無いというほどの登り道が峠を直登している。直登しているが故に、距離は短そうだ。あきらかに上に見えるのは峠である。一番軽いギアで、一気に登ろうとするが、やっぱり最後にはもがき苦しみながら峠に到着した。 峠の上は、展望を楽しむためにか、広くなっていて、車が数台止まっていた。登ってきた側とは反対側で、これから下る側には眼下にバレンシア島が見え、特徴のある景観を作り出している。 峠の脇の丘に登って360度の展望写真を撮影した後、上着を着込んで、バレンシア島目指して、これまた直線の道を一気に下る。下り終えたところの道のすぐ脇に、羊の毛を刈っている場面に遭遇。車で来た何人かの観光客も見物しているので、それに混じって見学させてもらう。 |
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| Valencia島のHeritage Center |
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海岸沿いの小さな集落に入り、橋を渡ってバレンシア島に入ったところに、ヘリテージセンターの標識が現れた。左側を見ると、あまり大した設備ではなさそうな低い建物があり、トイレ休憩がてらに覗いてみることにした。 駐車場の入り口から入って行くと、建物は思ったより地下方向に広くなっている。その建物の入り口に、多くの荷物を積んだマウンテンバイクが止まっていた。ちょっと眺めていると持ち主が現れ、話をすると、フィンランドから来たサイクリストで、長期間かけてヨーロッパをくまなく走っているそうだ。 ヘリテージセンターは見る価値がありそうだと判断して、トイレを拝借してから、チケットを購入する。展示内容のほとんどが、グレート・ブラスケット諸島の探検と、この付近の開拓の歴史である。古い写真を見ると、この近辺の人々の昔の生活をかいま見ることができる。スライドなどもあり、とてもビジュアルに表現しているので、少々の英語しか理解できない私でも楽しむことができた。 雲の切れ目から、たまに太陽が見える。バレンシア島の海に近いところを直線的に通る道をカイツ・タウンに向かって走る。ここには、本島との間を結ぶ連絡船が発着している港がある。 |
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カイツ・タウンの集落に入ると、YHの標識が目に入った。このYHは、この季節は休館しているはずだが、標識につられて寄ってみることにした。敷地の入り口から覗いただけなので、どこがYHかよくわからなかったが、古い建物が並んでいた。 港に出て周囲を見渡すと、連絡船が航行しているのが見える。思ったより小さなフェリーだ。標識に従って桟橋に向かうと、連絡船がすでに到着していて、車が何台か入ろうとしている。自転車を押して乗船すると、女の人が切符を売りに来たので、2ポンド支払う。 |
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橋を出た連絡船は、数分で対岸のリーナード・ポイントの桟橋に到着。船旅という言葉さえ思い浮かべるひまもない航海であった。 リーナード・ポイントは倉庫などが少々あるだけで人気が無く、とても集落と言えるようなものではない。地図の入れ替えや、荷物の整備をして、早々に出発。連絡船が発着する場所に向かう割には、細い道である。のんびり10分程走って、リング・オブ・ケリーの道に戻る。 |
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リング・オブ・ケリー上にある町としては、大きい部類に入るカーシービーンの町に到着した。町の中心部にある公共施設の前の広場では、古書などを売るちょっとした市が出ていた。リング・オブ・ケリーの道路を挟んで反対側の小さな商店で、サンドイッチなどの昼食を購入し、その広場の回りにあるベンチに腰掛けて食べた。 昼食後、この町は何か見るべき物はないのかと、リング・オブ・ケリーとは別の道を散策してみるが、特別な物はないようだ。元の場所に戻ってくると、サイクリング車に乗った女性が先ほどの店の前にいた。少々話をすると、私とは逆方向に走っているとのこと。一人でもサイクリングの楽しさを感じることができる女性がいることを知っただけでうれしくなった。 出発しようと思い、自転車にまたがったまま地図を入れ替えようとしたら、ケースから出した地図を、足下に落としてしまった。とりあえず、これから使う地図をケースに入れてから拾おうと思っていたら、地元のご婦人が通りかかり、腰をかがめて私の地図を拾ってくれた。なんと親切な人でしょう。アイリッシュは親切な人が多いとは聞いているが、実際にその親切に触れて感動してしまった。 カーシービーンの町を出たリング・オブ・ケリーは、海と道路の間にある小高い山を迂回するように、ちょっとだけ内陸に入って行く。ほんの少しづつではあるが標高を上げ、ピークを越えるとまた海沿いに戻ることになる。 |
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たったの120mの標高とは言え、徐々に登りを実感させるような角度になってきた。と思うとすぐに峠に到着。峠付近にはレストランがあり、駐車場の片隅で自転車を止めて休憩していると、グループツーリングだろうか、中年のご夫婦が乗る自転車が何組か峠を登ってきて、通り過ぎていった。 こんなに登ってきたか?と思わせるほど、まとまった量の下りを楽しみ、再び海岸沿いのコースになった。海を隔てて反対側には、これから訪れるディングル半島が見える。山肌にいろいろな色が見え、楽しみだ。 ふと、海岸線と反対側の右側を見ると、鉄橋が見えた。どおやら鉄道のようだが、こんな所に鉄道が通っているはずはないと思い、地図で調べてみると、廃線跡のようだ。昔はカーシービーンまでの旅客路線でもあったのだろうか、それとも森林資源を運ぶための貨物路線かと、想像を巡らせながら走っているうちに、リング・オブ・ケリーは再び海岸線に別れを告げ、内陸に入っていった。 |
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一直線に走るとキルオーグリンの町だ。ここまで来るとリング・オブ・ケリーはスタートしたキラーニーにもずいぶん近い。インフォメーションが目に留まったので、覗こうとしたが、すでに閉まっていた。 コンビニのような商店で、宿で飲むためのティーバッグを購入する。なかなか少量の物はなく、おまけに皆ポットに放り込むタイプで、日本で売っているようなひも付きの物ではない。 今日は、キルオーグリンにあるファームハウスに泊まろうと考えているが、かなり郊外になるので、この町で夕食を済ませておこう。レストランを探しはじめるが、なかなか気軽にはいることできる店は見つからない。結局最初に目についた、インフォメーションの正面にあるお店に入って、ラザニアを注文する。食後のデザートは迷ったあげくピーチメルバを頼んだが、これの甘ったるいことと言ったら・・・。 今日泊まりたいと思っているファームハウスは、キルオーグリンの町を通り抜け、明日向かうディングル半島方向へ数キロメートル行ったあたりにある。宿には、例によって飛び込みなので、もし今日は泊まることができなかったら、この町まで戻ってくるしかないかな。などとと思いながら、キルオーグリンの町を出る。 |
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ディングル方面への道の途中で右に折れると、目的のファームハウスがあった。一見、普通の農家である。立派な建物の正面のドアをノックしても誰も出てこない。庭の方に廻ると、何人かの泊まり客がいたので、管理人さんの居場所を尋ねると二階にいるだろうとのことだ。 二階はオーナーの住居のようだ。肝っ玉母さんのような太ったおばさんが出てきたので、泊まりたい旨を伝えると、一階のドミトリーに案内してくれた。ランドリーの利用と、明日の朝食もお願いする。 先ほど購入した紅茶を飲むため、キッチンで湯を沸かしている間に、洗濯物を建物の前にある農機具置き場の片隅にある全自動洗濯機に放り込む。庭には家畜として飼われている鳥や動物たちがたくさんいて、見ていて飽きない。動物好きな人にはたまらない宿だろう。クジャクに気を取られていたら、お湯が沸いているよと、他の泊まり客から声がかかり、あわてて、キッチンに戻った。 |