アイルランドサイクリング

アイルランドサイクリング 詳細
1998年5月19日 火曜日 いよいよリング・オブ・ケリーを走りはじめる


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走行ルート
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Killarney国際YHKate Kearney's CottageHead of Gap峠(標高240mh)Kate Kearney's CottageKillarneyLady's View(標高150mh)Moll's Gap峠(標高260mh)Kenmare
天候
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晴れ
宿泊先
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Failte Hostel
走行データ
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最高時速:37.5km/s
積算距離:3915km
走行距離:70.3km
走行時間:5時間10分56秒
平均時速:13.6km/s
支払い
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Killarney YHシーツレンタルデポジット返金IR£-1.00
ミネラルウォーター(Killarny Springs)IR£0.80
昼食(Kate Kearney's Cottage前カフェ)IR£4.75
サンドイッチ
ミネラルウォーター
オレンジジュース
コーラIR£1.00
Failte Hostel宿泊料IR£7.00
Failte Hostelシーツレンタル料IR£1.00
夕朝食食材(食料品店)
オレンジジュース(1リットル)IR£0.69
バター(5個)IR£0.40
ハインツ・ベジタブルスプレッド(瓶入り)IR£1.18
ハインツ・スパゲッティー缶詰(425g)IR£0.40
スライスハム(100g)IR£0.65
スライスチーズ(10枚入り170g)IR£0.87
バナナ(3本)IR£0.42
牛乳IR£0.12
ハンバーガーバンズ(6個入り)IR£0.65
ラガービール(Kenmareのパブにて2杯)IR£4.20
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Killarney国際YH 08:43発
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珍しく早めに出発。もちろん朝食はとっていない。今日は念願のリング・オブ・ケリーのサイクリングに出発するということもあり、ウキウキだ。その前にキラーニー周辺の観光地として外せない、ダンロー渓谷を走りに行く。

ダンロー渓谷はYHからも近く、キラーニーに戻ることになれば、またYHの近くを通るのでYHに荷物を預けておくという手も考えたが、万が一、ダンロー渓谷の一番奥の峠を越え、キラーニーを通らずにリング・オブ・ケリーのルートに出ることになった場合を考えて、荷物は全て持ってゆく。

昨日購入した地図を頼りに、主要道を離れ、ショートカットするように田舎道に入ってゆく。地図によるとストーンサークル等の遺跡が有るようだが見あたらない。一台の乗用車が通りかかって、牛を見なかったかと質問された。牧場から逃げ出した牛でもいるのだろうか、細い道端で出会ったら、少々恐い思いをするかもしれない。

Kate Kearney's Cottage 09:19着 09:30発
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ダンロー渓谷に入るずいぶん手前で、道の脇のスペースに馬が何匹もいる所があった。`数人のいかつい男たちがコントロールしているようなので、道端に飛び出してくること無いとは思ったが、おそるおそる通り過ぎる。

正面に見える大きな山に向かって、まっすぐに南方向に緩やかに登ってゆくと、徐々に谷筋がはっきりしてきた。数軒の店があって、その中に、ケイト・カーニーズ・コテージがあった。他の店も含めて、この辺で朝食をとることができればと期待していたが、まだ開店していないようだ。

うろうろしている内に、観光バスが現れ、高齢者ばかりの団体さんが降りてきて、すぐに谷筋を歩き始めた。とても元気な老人たちである。

ふと登ってきた方向を見ると、長いスカートの女性が自転車でゆっくり登ってくるのが見えた。あの格好ではとてもサイクリングどころではないだろうから、地元の人だろうと思いつつ、出発する。

ここから舗装は切れ、踏み固められた走りやすいダートとなる。前方には山が見え、周囲はとても静かである。登り坂も緩やかで、川のせせらぎをくり返し横切り、谷をゆっくりと登ってゆく。さっき出発した老人たちの団体がせっせと歩いている横を、ゆっくり抜かしてゆくと、みな挨拶をしてくれる。団体の列は長く、結局たくさんの人に挨拶をして、やっと1人の空間に戻った。

Head of Gap峠(標高240mh) 10:10着 10:40発
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Head of Gap峠に向かってダンロー渓谷を登るs5tr
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Head of Gap峠に向かってダンロー渓谷を登る
Head of Gap峠に到着s5tr
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Head of Gap峠に到着
Head of Gap峠の愛車Moultons5tr
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Head of Gap峠の愛車Moulton
レンタサイクルで楽しむ人々s5tr
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レンタサイクルで楽しむ人々

岩がせり出し、道が曲げられ、曲がりくねった川がせき止められ池になり、とてもダイナミックな景観を作り出している。池の脇の草むらには数匹の羊がいて、草を食べている。

ゲートのように狭くなった地帯を抜けると、一転して広々とした空間があり、高い山は側面に移り、正面の丘の向こうは何もない。きっとあそこが峠に違いないと思い、登ってゆくと、S字カーブを越えたところが峠であった。

峠はとても広々としていて、羊が数匹いて、とてものんびりした雰囲気である。地図で見ると、この先のルートは、リング・オブ・ケリーをかなりショートカットしてしまうか、もしくは、フットパスのような道しかないようなので、予定通り、キラーニーに戻ってからリング・オブ・ケリーを走り始めることにする。

写真を撮り一服した後、来た道を戻ろうとすると、広々とした平原をこちらに向かって1台の自転車が走ってきた。登り口で見かけた女性である。その自転車は峠のすぐ下の陰に入り、出てこないのでしびれを切らして下ってゆくと、そこで自転車を止めて休憩していた。軽く挨拶をして、どこから来たのか聞くと、デンマークから来たという。軽装なので、てっきり地元の人かと思っていたが、良く見るとレンタサイクルのようだから、荷物は宿にでも置いてきたのであろう。峠はすぐそこだと教えてあげると、私の英語が変なのか、私の言ったことをくり返してにやにやしている。自分の英語のひどさを棚に上げ、少々気分が悪くなった。

自転車にまたがり、走り出そうとすると、右手首が痛い。さっき、変わった旅人に話しかける際に、ハンドルを道の砂利に取られて、ひねってしまったのだ。でも、すぐに痛みは無くなるだろうとたかをくくって、来た道を軽快に下ってゆく。

Kate Kearney's Cottage 11:28着 12:07発
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湖の点在するダンロー渓谷s5tr
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湖の点在するダンロー渓谷
馬車観光が有名s5tr
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馬車観光が有名

この時間になると、観光客も増えてきて、レンタサイクルに乗ったグループとすれ違い、馬車が何台も登ってくる。そんなに広い道ではないところを馬車が道をふさぐので、自家用車は事実上通行止めだ。車で行くのは早朝に限るとは聞いていたが、こういうことだったのだ。

ダート道が始まるケイト・カーニーズ・コテージがある所が馬車の出発点である。往路では見ることがなかった沢山の数の馬車が、観光客を待っている。こんな所を自家用車で通過しようとする人は、ムリムリというジェスチャーで追い返されている。駐車場に車を止めて、われわれの馬車に乗れ!!と言うことだろう。

先ほどは閉まっていた売店で、サンドイッチなどの軽食を買い求め、外のベンチでブランチである。空腹では有ったが、それを忘れるほどの、良いコースだった。しかし、自家用車でなくても、早朝に来て良かったと思う。数台の馬車なら、かわいげもあるが、これだけの数の馬車と一緒に走るとなると、自転車であっても快適とは言い難い走りになるだろう。

食事がてら、馬車の客引きを眺めながら30分ほどベンチで休憩した後、来た道を引き返す。

Killarney 12:45着 13:00発
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Killarneyの聖メアリー大聖堂s5tr
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Killarneyの聖メアリー大聖堂

キラーニーの中心部へ入る手前からは、走ったことのないルートを取る。昨日到着してから、買い物や食事ばかりで、町中の観光ポイントにはほとんど訪れていない。大きな教会の前で写真を撮って、いよいよリング・オブ・ケリーのサイクリングの始まりだ。

馬車の糞が落ちていて、お世辞にもきれいといえない中心部の道を走り抜けると、程なく周囲は緑豊かになってきた。湖沿いの公園の入り口が見えてきたところで、後輪から「シュー」という威勢の良い音がしてパンク発生。これだけはっきりしているとあきらめもつくという物だ。

パンク修理場所 13:30着 14:00発
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公園の入り口で、タイヤの外側からパンクの原因を見つけて愕然とした。タイヤが3mmほど切れていて、そこに小石が詰まってパンクに及んだようだ。その切れ目の奥にチューブを見て一瞬にして全てを悟った。ワイト島のダートコースでパンクしてから、何度かチューブを交換しているが、タイヤの傷の中の小石が原因で何度もパンクが発生していたのだ。

なんと念願のコースを走り始めたとたんにこの有様だ。このタイヤを使い続けるかぎり、同じ事が必ず再発するだろう。換えのチューブは2本も持っているが、スペアタイヤは持っていない。このタイヤは、この自転車専用の物で17インチという特殊なサイズであり、メーカーのある英国の隣の国とは言え、入手は不可能だろう。これはマズイとひたすら焦り、じっくり対策を考えなければならないと、公園の入り口の反対側にある、駐車場の入り口の花壇に腰掛けて、思案し始めた。

まず、パンクが再発しないようにするには、どのようにすべきか。いままでパンク修理したチューブを見ると、パッチを貼った箇所は、バルブを中心に対称の位置である。たまたま同じ方向にチューブを入れていたなら、タイヤの傷と修理箇所が一致し、パッチのおかげでパンクに至らなかったかもしれない。今回はそれを狙った位置に、チューブを装着することにする。それから、タイヤの内側にも特大のパッチを貼って、小石が詰まっても、チューブに干渉しないようにした。これでこれからのパンクは防ぐことができるかもしれない。

なんとかチューブをセットし、空気を入れてみて、再び愕然。タイヤの傷口がぱっくり開いている。このまま使用を続けていると、いずれはタイヤがバーストするだろう。前後のタイヤを交換し、問題のタイヤを前輪に持ってきて、空気圧を下げることにする。全ての荷物は後部に集中しているので、後輪に比べ、前輪の加重はかなり低いだろうという判断だ。

おそるおそる走りはじめると、周囲の森は徐々に深くなり、緑の固まりが強い日差しを心地よく遮るようになってきた。だんだん登りの角度も増してきているようだが、とても快適である。川を横切る小さな橋で休憩していると、ほとんど荷物を積んでいない自転車がぽつぽつと下ってくる。客と自転車を車で高いところまで運んで、リング・オブ・ケリーの景色を満喫しながらダウンヒルを楽しませようと言うツアーが有るとのことなので、きっとこれのことだろう。

Lady's View(標高150mh) 15:13着 15:46発
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Lady's Viewこれぞ貴婦人の眺めs5tr
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Lady's Viewこれぞ貴婦人の眺め

標高の増加につれ、素晴らしい景色がちらちら見えるようになってきた。今日のコースのハイライトであるレディース・ビュー(貴婦人の眺め)に到着である。低木の生えた低い土地の向こうに、湖が見え、控えめに山が見える。これぞ貴婦人の眺めだ。

少々展望をを楽しんだ後、トイレ休憩を兼ねて、この辺で唯一のレストハウスに入りコーヒーを注文する。土地柄に似つかわしくないハイカラな椅子やテーブルだ。コーヒーを飲んでいる間に、自家用車で来た家族連れが入れ替わり立ち替わり入ってくる。さっさと用を済ませて、外の景色を楽しんだ方が得策である。

レディース・ビューを背景に、自転車を立てかけ、レンズを換え、アングルを変え、ピントの位置や露出を変え、写真を撮りまくった。景色に後ろ髪引かれ、出発するのがためらわれるが、まだまだ登りは続くので、先を急ぐことにする。

沿道からは高い木が減ってきて、低木ばかりになってきた。途中、道の脇で草を食べていた何匹かの羊が、こっちを見てびっくりしている。自転車を止めて見ていると、耐えきれなくなったのか、猛然と道路を走って逃げ出す。彼らはいつもそうだが、自動車という名の、生き物の気配もない、けたたましい音を発しながら通り過ぎる四角い鉄の箱には慣れてしまっているようだが、なにやら得体の知れないものにまたがった動物らしき物が近づいてくるのには慣れていないのであろう。

Moll's Gap峠(標高260mh) 16:26着 16:50発
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Ring of Kerryの道路には羊がうろうろs5tr
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Ring of Kerryの道路には羊がうろうろ
Moll's Gap峠からKenmereへ下るs5tr
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Moll's Gap峠からKenmereへ下る

峠の登りはかなりのきつさになり、ついに緩やかにカーブする向こうに峠が見えてきた。程なく峠に到着。身構えた割には、意外とあっけなかった。

峠からは北側に展望が開け、丁度真正面に、山並みがV字型に切れ込んでいるのが見える。これこそ午前中に登ったヘッド・オブ・ギャップ峠である。ここからの展望は、レディース・ビューに比べ、少々ワイルドで荒涼とした感じであるが、ダイナミックさは引けを取らない。

峠を南側に越える部分は、切り通しになっていて、両サイドが荒々しい岩肌になって迫っている。そこを沢山の観光バスや、大型車が通り抜けてくる。ここから、イバラ半島の付け根に位置するケンメアの街に向かっては、ほぼ直線的に下ることになる。森はほとんどなく、牧場なのか、単なる放牧なのか、お世辞にも整備されているとは言い難い土地に多くの羊が飼われている。道の端に岩が沢山ある所があって、沢山の羊がなにをするでもなく、たたずんでいるので、自転車を止めてカメラを向ける。ここの羊は、種類や大人子供を問わず、いろいろな羊がいて、見ていて飽きない。親子連れと思われる羊もいて、親羊にまとわりつく子羊は見ていてとてもかわいい。このような羊の飼い方は、他の国では見たことがない。

Kenmare 17:30着
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宿泊したKenmereのFaite Hostels5tr
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宿泊したKenmereのFaite Hostel

嫌になるほど長い距離を下って、やっとケンメアの街の入り口に着いたようだ。リング・オブ・ケリーへの分岐点を直進して、町の中心部に向かう。

今日泊まるところは、ユースホステルの協会に加盟しない自由な宿、インディペンデント・ホリデー・ホステル(略称IHH)である。町の中心部を横切り、いちばん奥まで行くと、曲がり角の正面にその宿はあった。

入り口と思われる所を入ってゆくと、受付があるが、誰もいないので呼び鈴を押す。ちょっと待っていると、白いスポーツジャージをまとった女の子が来て受付してくれた。部屋を指示してくれた程度で、ほとんど説明がなかったが、これで十分だということだろう。自転車を納屋に収納して、外したバッグを持って部屋に転がり込む。同部屋のバックパッカー2人は荷物をベッドの下に押し込んで、外出しているらしい。

このIHHの宿は、形式は様々なようであるが、YHと同じレベルの宿が多く、YH利用者にとっては安心である。IHHの一覧が掲載されているパンフレットを受付のカウンターからもらってきたが、協会のYHに比べ、あちこちに沢山あるのがわかる。この資料は後の宿泊予定を立てるのに有効だ。

少々街をうろつき、1人でも夕食が楽しめそうな場所を探すが、結局は見つからない。宿は例に漏れず、自炊設備は整っているので、自炊することに決め、食材を買い出しに行くことにする。かろうじてこの時間でも開いていた食料品店に滑り込み、今晩の夕食と明日の朝食分以外にも、これから多用するであろう自炊に備えて、かさばらない物でいろいろ使い回しができそうな食材を買い込む。

夕食はお手軽に缶詰のスパゲッティーなどで済ませて、ビールでも飲みにパブに行くことにする。気の利いたレストランは見つからなかったが、パブなら1人でふらっと入ることができるだろう。いいや、是非ともこのひなびた街で、アイリッシュパブを体験してみたいものだ。

買い物に出たときに目を付けていた、安ホテルの1階にあるパブのドアを空けて中に入る。ビールを注ぐ機械のあるカウンターに座り、女将さんにラガービールはどれか尋ねて、ハープというブランドの物に決めて注文する。町中でよく見かける楽器のハープ印の緑色のヤツだ。アイルランドといえば、ギネスビールだが、船の中で飲んだので今度はラガービールをという訳だ。

女将さんと、日本から来たとか、サイクリングしているなど、おきまりの話をし始める。日本人は勤勉で頭が良いという評価をしてくれたが、休暇の過ごし方も知らない頭の悪い人が多いのだと教えてあげた。隣に座っていた、すでにできあがっている地元のおじさんが話しかけてきて、オレは日本の会社に勤めていたんだぜ!!と得意げである。よく聞くと、日本の自動車メーカーのディーラーで働いていただけらしい。

女将さんにこれからのサイクリング予定ルートを話すと、リング・オブ・ケリーの後のディングル半島へのルートは道が悪いとのこと。距離もそこそこ有るようで、他によいルートがあるかどうか、他の客と相談していたようだが、他には良いルートはないようだとの結論。後でこのことを思い出すことになる。

マスターとおぼしき人が出てきて、カウンターにある怪しげな機械を指さして、自慢げに話す。ワインオープナーだとのこと。カウンターに設置された機械なのだが、ハンドルを操作するだけでワインのコルク栓を抜くことができるようで、かなり古くて珍しい物だそうだ。

話をしている内に、あっと言う間に時間が経ってしまった。アイリッシュパブを体験し、地元の人と話をして満足。ほろ酔い気分で、YHのベッドに戻り暴睡したのであった。

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