YHの住所の紙を見せて、タクシーに乗り込むと、街灯が川のようにつながった道を滑り出すように走り出し、どんどん加速する。他の道に合流するたびに、交通量が増え、その中をタクシーは、他の車に対抗するように走る。2年前にやはり夜遅くにこの空港に到着したときのことを思い出した。もちろん、その時は一人ではかったし、現地のボランティア事務所のスタッフが車で迎えに来てくれたので、まったく心配はなかったのだが。
メキシコ・シティーのタクシーは、フォルクス・ワーゲンのビートルを使った流しのタクシーによる犯罪発生率がとても高く、絶対に利用するなと言われている。それに対して、これは空港の専属タクシーだから大丈夫だと、自分に言い聞かせる。だが、流しのタクシーと同様、どこか悪い仲間の所に連れて行って、身ぐるみ剥がすことは可能なわけで、安心しきれない部分もある。
ゾナ・ロッサという標識が何度か現れたと思ったら、目的地に近いらしく、交通量の多い道から路地に入る。運転手は、私の持っている住所をもう一度確認すると、また違う道に入る。ここまで来れば、あとは通りの名前と、番号だけだと思うが、一方通行などの制限があり、そうはいかないようだ。キョロキョロ、建物に書かれた番号を見ている。一生懸命目的地を探しているところを見ると、何処か変なところに連れて行かれるようなことは無さそうだと思いつつ、おいおい、なにやってんだ。という気にもなってくる。数分間うろうろした後、やっとYHに到着。運転手に「グラシアス」と声をかけて、荷物を降ろして、YHに入る。
しっかりした建物のYHに入ると、すぐにカウンターがあったので、呼び鈴でスタッフを呼び出す。予約はされているようで、名前を言ったら、リストと照合してくれた。US$10を支払い、鍵とシーツを受け取り、指示された3階の部屋の鍵を開けて入ると、2段ベッドが2個有った。洗面所やシャワー・ルームがしっかりしているのを見ると、もともとホテルだったのだろう。早速シャワーを浴びた後、そとの喧噪を聞きながら、ベッドに横たわる。