高千穂YHでは、今となっては少々特殊な方法で朝出て行く人々を見送る。フォークギターを抱えてYHおなじみの歌を歌う青年を見ていると、昔のYHを思い出す。見送られる方がそんなやり方を知らないらしく、何事かととまどっているぐらいだ。
YHを出発して道に出た途端、YHの会員証を忘れたことに気がつく。すぐに戻って受け取るときにYHの人に昔の会員証を見せると、なつかしがると同時に、私に向かい、「若いのかそうでないのかわからなかった」と言った。この年で自転車に乗ってYHを泊まり歩いているのは、昔のYHブーム(私の前の世代です)の人か、節約旅の学生ぐらいかも知れない。
もう一度YHを出発して旧道を川沿いにゆるやかに登り、川のかなり高いところを橋を渡っており返して今度は川沿いにひたすら下る。取り敢えず延岡までは川沿いに下りだ。昨日YHに向かう途中にわかれた新道とは、なかなか合流せず、車はほとんどこない。美しい川沿いの緑の豊かなコースをゆっくり楽しみながら下る。途中大小さまざまな滝が切り立った壁を伝い流れ、水しぶきが路面を濡らしいっそうさわやかな気分にさせてくれる。
途中、新道と合流したはずなのにほとんど車の交通量が増えない。途中の集落をいくつか過ぎたところで随分高いところにバイパスが通っているのを発見した。新道とわかれている間に新道もバイパスと分岐したため、交通量もさほど増えなかったのだ。
途中の大きな町の集落を過ぎたところで左手の高千穂鉄道の小さな鉄橋越しに、ちらっと滝が見えた。戻ってよく見ると道から50m程奥まったところにあり、30m程の高さから、一気に滝壷まで落下する見事な滝だ。しかし目立った看板などなく、ちいさく「観音滝」とかかれていた。あまりに見事なことと相反するように観光地化されていず、さびしささえ感じる。見渡しても自分一人で、何かいわく付の滝なのではないかとまで思ってしまう。滝壷から流れる小川の脇に車が通れるほどの道が有り、反対側は森を抜ける階段付の歩道となっている。小川が滝壷から湧き出るところに、神社にあるような朱塗りの小橋がかかっている。見とれて30分、鉄橋を通る高千穂鉄道も観光客へのサービスのためか、徐行して通過するようだ。