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外が明るくなってきたので、自動的に目が覚める。ぼーっと車窓を見ていると、何処かで見た景色が目に入る。田畑の中に、こんもりした山が点在し、松が生えている。象潟だ。以前、奥の細道サイクリングで訪れたところで、松尾芭蕉はここを目指して、日本海側を北上し、彼の旅で訪れた最北端の地になっている。当時は松島のように松の生えた島が湾に点在していたようでかなりの著名な景勝地だったようだが、その後、土地が隆起し、海でなくなり、現在に至る。そんなことを思い出した。 あと、20分ほどで、羽後本荘駅だ。今日の行程は明確には決まっていない。とにかく、横手のやきそばを食べて、大曲駅前で宿泊することだけだ。フリー切符エリアなので、JR線ならどんな移動も有りだし、時間もたっぷりある。切符は秋田駅までだが、この時間に起床出来たので、手前の羽後本荘駅で乗り換えて、由利高原鉄道に乗り終点まで行くことにする。以前、こちら方面に来たときに乗ることが出来なかった鉄道だ。 あけぼのから下車して、自転車を担いで、跨線橋を使って駅舎に向かう。改札を出て、見渡すと、由利高原鉄道の窓口があり、その脇に矢印で由利高原鉄道の鳥海山ろく線の方向を指示している。改札は別だが、一歩入るとJRと同じエリアのホームを使っていて、一番遠いホームを使っている。自転車を担いで跨線橋をまた登って戻るわけで、自転車を置いてくれば良かったと後悔。 その、由利高原鉄道の窓口で終点の矢島駅までの切符を買おうとすると、窓口の女性が、1日乗り放題のフリー切符の方が少々お得だというので、そのフリー切符をお願いするが、1,000円以上して片道の580円より明らかに高い。どおやら、私が往復すると思いこんだようだ。通常の鉄道ファンならそうなるかもしれないが、私は矢島駅からは自転車だ。 駅のキオスクでおにぎりや、パン、飲み物を購入し、由利高原鉄道の列車内で車窓を楽しみながら朝食とする。それにしても、「学生調理パン」という惣菜パンを購入したが、学生が作っているのだろうか。内容は普通だが不思議だ。 |
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由利高原鉄道は、駅間隔も狭く、のんびり沿線を走る生活路線という感じだ。車窓からは、鯉のぼりがよく見える。今日は、5月5日の子供の日だから当然といえば当然だ。列車内にも鯉のぼりが掲げられている。 40分ほどもかからずに、終点の矢島駅に到着。立派な待合室があり、しっかりした駅舎だ。なにやら、沿線が、釣りキチ三平のロケで使われたようで、そのときの様子が展示がされていた。列車のボディーにも釣りキチ三平のイラストが描かれていた。 まだまだ時間は早く余裕があるので、待合室で、仕事の電子メールなど処理してから出発。隣にある古い建物は、旧駅舎のようだ。 この駅から走り始めて、東方向に横手市に向かうのだが、走行ルートをどうするか少々迷った。国道108号だとだいぶ南にずれ、湯沢に出てしまうので、横手までの最短ルートである、県道32号を行くことに決めて出発。しかし、峠道の登り口で、この先通行止めの看板があり、ガックリ。途中の軽井沢という集落までは行けると書いてあるが、その先には行けないとのことで、峠の向こう側には行けないようだ。地図では冬季通行止めとなっているが、さすがに冬季ではないので、問題なしと思っていたが甘かった。少々戻ったところに有った消防署で、掃除中の消防隊員の人に状況を尋ねてみる。もしかしたら自転車なら越えられるのではないかと思ったが、ダメとのこと。消防の人だから情報は確かだろうが、非公式には自転車が通れるとしても、それは言わないだろうな。という気もする。 |
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消防署員の人からのアドバイスもあり、国道108号線で一度、前郷の集落まで戻って、そこから、小さな峠を越えて、一つ北側の谷に移動し、国道107号線に入ることにする。この国道107号線は、羽後本荘から横手に向かっているので、ルート的には由利高原鉄道に乗ったのがほぼ無駄になるが、由利高原鉄道の乗車と、沿線を走ることが出来たので、満足だ。 先ほど停車した前郷駅を通り、線路沿いに西に向かい、線路を越えて北を目指すと、すぐに小さな峠に到着。 |
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小さな峠から下り、石沢川を越えて石沢の集落に入り、突き当たりの国道107号(本荘街道)を右折。しかし、平行に地図にはない新道が出来ていてそちらが現在の国道になっているようで、交通量が多い道が見えてくる。おかげでこっちの旧道は交通量が少なく走りやすい。 石沢の集落から数kmで旧道は新道に合流するが、また数kmゆくと、旧道があり、そこから、8割方旧道が残っているので、新道と何度も交差するようにクネクネしている交通量の少ない旧道走行を楽しむ。 |
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老方という集落にて国道107号と別れ、県道48号横手東由利線を祝沢川沿いに登る。 それほどきつい渓谷沿いではないが、切り通しがあったり、トンネルがあったりと、面白いコースだ。自動車が全く通らないので、少々心配になるが、先ほどのように案内がない。 |
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だらだら登って行くと、峠の浮蓋トンネルに到着。手前に通行止めの看板が倒れている。あえて倒してあるようなので、大丈夫だろうと思い、トンネルを抜け横手市に入ると、後から自家用車が来て通り過ぎた。峠を越えて移動しているので、この先行き止まりと言うことはあり得ないだろう。 簡易舗装のようになった細い道を下って行くと、北斜面に雪が残っていたり、道の上にわきから崩れ落ちたと思われる雪が残っていて、車の轍の上を慎重に走り抜ける。 県道は谷の上の方を走っているが、下に谷を見ると川沿いにちゃんとした舗装路が見える。地図にも明記されている。自動車がたまに走っていて、こっちは県道なのにほとんど整備されておらず、やっと車が一台通れる程度の道で、心細くなってくる。下の立派な道に移行することができそうな抜け道があるが、あえて、県道を行くと、トンネルを2つ通り抜け、ついに未舗装になり、農道のようになっている。右に行く分かれ道も未舗装だ。脇に立派な道があるので、こっちの県道は舗装などの整備を諦めているのだろうか。脇の道に移動して、東に向かい、結局また、県道48号線に合流して、横手市街を目指す。 |
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迂回する形で、再び県道に出て、少々登り、地図に出ていない覆道を越えると下りになり、沼館橋で、雄物川を渡ると、横手盆地だ。ひたすら県道を東に走り、やがて再び国道107号に合流して横手市街に入る。道なりに行くと、横手焼きそばで有名な店があるはずなので、詳細な場所を確認せずにそのまま、走る。 そろそろ、地図を広げて場所を確認しようかと思ったら、皆喜多亭の看板が目に入る。「横手やきそば」と書いてあるので、この店に間違いない。予定通り入店するが、さすがに四天王として表彰された有名店だけ有って混んでいて、ちょうどカウンターの空き席に座れた程度の混み具合。 横手やきそばの特徴である目玉焼きのトッピングの有無や、各種サイズ、カレー味などメニューが豊富だが、まずはベーシックな並やきそばを頼んで食べる。ボリュームが少なめだったが、この先、横手やきそばの有名店をハシゴする予定なので、これぐらいの方がよい。 一人で黙々と食べていると、カウンター越しに店長さんが気さくに話しかけてくる。つい先日までとても寒かったが、GWに入って暑くなったと言うことだ。矢島からここに来る間に、県道を通ったが、路面にも雪が残っていたというと、少々驚いていた。これから行く六郷の話しなど伺って、店を出る。 |
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次の横手やきそば四天王店は、駅近くにある食い道楽だ。適当に国道から別れて住宅地の中を進み、駅前に出ると、本当に駅前広場に面したところに、その店があり、店の前に人が並んでいる。自転車を止めて、ご夫婦の後に並ぶと、ご主人が、面白い自転車ですねと、話しかけてきた。そのご夫妻は、八戸からの旅行者。こっちは今日、夜行列車で群馬から来て、決してハードな走りではなく、観光地巡りや、おいしい物を食べ歩いたりのサイクリングですと言うと、自由度の高い旅だと、うらやましがられた。 ほどなく入店し、カウンターに座る。この店は横手やきそばの専門店ではなく、食堂なので、バリエーションは少なく、基本的な目玉焼きトッピングのやきそばを注文。麺については、さきほどの皆喜多亭と同じ味だが、後半は、目玉焼きを崩して麺と絡めて食べるのがおいしい。さっさと食べ終えて、店の外に出ると、先ほどのご主人が私のカメラで写真を撮ってくれた。 |
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四天王として表彰された店は、その名の通り4店有るが、一つは、ずっと南の方なので、今回は市の中心部に近い、3店を試すつもり。残りの1店のある市役所近くを目指すと、「四天王」と書かれた幟が目に入る。店の名前に聞き覚えがなかったが、この店意外にないだろうとおもい、入店。こちらも、横手やきそばの専門店なので、バリエーションがあるが、ベーシックな横手やきそばを食べる。先ほどの食い道楽とまったく同じ感じでおいしい。違うのは、乗っている目玉焼きが、よりレアなこと。こちらの方が、より麺に絡まって特徴を出している。 |
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横手やきそば館ゆうを出て、市役所の脇の通りを走ると、またもや、横手やきそばの幟があり、誘導されるように市役所正面に入る。「出端屋」という名称のお店だが、ここは見覚えがある。そうだ、目的の店はここだったのだ。しかし、売り切れの張り紙が出ていて、試すことは出来ず。さっきの店で食べて正解だった。いや、さっきの店に寄らなければ、こっちが食べられたのか? とにかく、横手やきそばは、日本三大やきそば(群馬県太田,静岡県富士宮,秋田県横手)の中では、一番好みの味であることが、解ったので、大満足。今回は3店舗のハシゴで終わりにし、将来また来ることにして、大曲方面に向け出発する。 |
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横手市の中心部から地図の情報より新しくなって位置がずれている蛇の崎橋を渡って、S字に曲がった横手川を越える。この先、道がクランク状になっていて、この道は県道272号で地図には羽州街道と併記されているが、この先、南北に走る2桁の主要国道である国道13号線に合流する形なので、この道は旧国道であることは想像に難くない。そして、この道はこの先クランク状になっている。いわゆる升形である。橋の上から小高いところに横手城が右手に見えるので、横手川の城のある側のエリアが城下町の主要部だったのではないかと思いながら北上する。 街内を抜けると、国道13号に合流し、自動車の交通量の多い中を走る。それでも、5kmほど走ると、今度は金沢という羽州街道の宿場の集落に入る旧道が別れる。それほど距離が増すわけではないし、足が疲れているので、旧道に入ることにするが、町は少々高いところにあり、登ることになる。たいした標高差ではないが、足が疲れているので、辛い。メインストリートは取り立てて古い街並みは見られないが、国道13号と違い、生活感が感じられて心が和む。 金沢を抜けると、再び国道13号に合流し、今度は5kmほどで、目的地の六郷の集落に入る。ここは、寺町と湧水の町で、案内に導かれて、御台所湧水という湧き水があったので、寄ってみる。清水がわき出ていて、地元の人が使っているのだろう。うろうろして観光案内所で休憩し、ニテコ清水という湧水で作ったというサイダーを飲む。案内の人の話しを聞くと、解っているだけで、近隣に約300カ所の湧き水があるそうで、中心部の著名な物が観光案内に掲載されているとのこと。お寺が並んでいる寺町の通りを通ってから、さっき飲んだサイダーの原料のニテコ清水に到着。由緒ある湧水だそうで、ここでサイダーを作っていて、周囲も土産屋とか食堂とかあり、観光資源として活用されているようだ。 最後に六郷の西からの入口付近にある側清水地蔵尊を見てから、六郷を後にする。 |
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六郷から大曲駅方面へは、再び国道13号線に戻って向かうことになるのかと思いきや、地図を見ると途中までは六郷の目抜き通りの延長の旧道らしき道で行けそうだ。そして、途中から、その道から斜めに別れてから国道に合流すれば、遠回りにはならない。思ったより交通量が多いが、国道に比べればましだろう。などと思いながら、地図にはないので近年出来たと思われる、巨大なショッピング・モールの裏を通って、国道との合流ポイントにさしかかる。 さて、ここから国道13号だと思いつつ、向こう側を見えると、来た道は国道を越えて向こう側に続いている。太くて交通量の多い国道の向こう側に行くために地下道があるので、待つことなく向こう側へ。そのまま線路を越え、目的地である駅の西口に出られるので、もう国道13号にはお世話にならずに済む。この道、国道とは無関係なのは当然だが、区画整理され、碁盤の目状になった道とも無関係に斜めに走っているので、かなり古い道に違いない。奥羽本線を横切って大曲の街内に近づくにつれ、沿道にある街並みがそう感じさせる。大曲工業高校の脇を通ったところで、「アマチュア無線クラブ」の文字が目に入る。高校生の時に部活動でアマチュア無線もやっていたが、この高校のクラブと交信したことがあることを思い出した。電波の上で、ほんの少しの会話だけだが、リアルにその電波の発信源を目の当たりにすると、当時こんな所と交信ししていたんだなと、若き日のことをを思い出す。あのころの交信相手もここには以内のだろうが、始めて訪れた大曲という街が、いきなり身近な存在に思えてくるから面白い。 大曲工業高校から、1.5kmほどで、大曲の駅前だ。本日宿泊の予約をしているホテル・ルート・イン大曲駅前は、その名の通り、すぐ駅前で、だいぶ手前から建物がよく見えていた。先に到着しているはずのHさんに電話をすると、すでにチェックイン済みで、駅前に集合しているとのことなので、合流すべく、チェックインする。 |
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ホテルを出て、すぐ目の前の大曲駅に到着。同じ宿を確保している、Hさんと、Tさん、今夜、夜行バスで、戻るIさんの3人と合流。Hさんは、新車のお披露目だ。白の車体にピンクのコーディネートが強烈な自転車になっているのをまじまじと見る。Bike FridayのAir Fridayというモデルだが、とてもよく走ると言うことで、うらやましい限りだ。 今日は宿泊せず帰るさんがお風呂に入ってから帰ろうと言うことで、温泉にご一緒させてもらうべく、大曲駅から北西方面に向かう。 |
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Iさんが事前に調査済みの、温泉「花館バーデン」に到着。ホテルの中にあるのかと思い、一度手前にあるホテルのエントランスに向かうと、外から回って奥の方だという。「花館」はこの付近の地名で、「バーデン」は、ドイツ語で温泉の意味。単純明快な名称だ。 別なサイクリングから合流するKさんとは、大曲駅で18時半に待ち合わせだ。時間がないので、自転車を止めて、建物に入り、出てくる時間を決めて、さっさと風呂に入る。今日は小さな峠をいくつか越え、100km以上走ったので、ゆっくり浸かりたいが、お湯はとにかく熱く長い間は入れた物ではない。余り時間もないので、ちょうど良かったかも。 |
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来るときは、どの辺か解らなかった温泉だが、帰りは駅まで迷うことはない。荷物も少ないので、猛然とダッシュして、大曲駅まで戻る。ちょうど、Kさんとの待ち合わせ時間で、駅前で合流。またまたHさんの新車のショッキングなピンクの仕様に盛り上がる。 さて、ほんの数時間ではあるが、今回の旅のフルメンバー5人が揃ったところで、夕食に繰り出す。リサーチしてくれていたのは、駅のすぐ前の地元の素材を使った料理が売りの「居酒屋三平」に向かう。 |
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居酒屋三平の前に自転車を止めて中に入るとおしゃれな店だ。まだ時間も早く、空いている。生ビールで乾杯し、今日取れたという新鮮な魚を使った料理など、お店の人のお勧めに従い、いろいろな料理を味わうが、どれも新鮮で、おいしい。今日は沢山走って、疲れて、熱い風呂に入った後で、ビールがどんどん進み、かなり酔っぱらってしまったところに、足が冷えて、酷く攣ってしまったため、座敷にはいられず、近くのイスに腰掛けさせてもらう次第。 |
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居酒屋三平をでて、今度はホテルの部屋でのもうということで、コンビニエンス・ストアで買い出しをして、ホテルに戻る。私は満腹で、酔っぱらって撃沈しているので、何も口にせず寝ころんでいると、Iさんのバスの時間。私とTさん以外は見送りに行って帰ってきた。 お開きになり、部屋に戻り、パソコンをLANケーブルに接続して少々設定をいじると、ネットに津かがった。仕事のメールを数本書いて送信して、寝る。 |