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5時過ぎにベッドから這い出て、冷凍ご飯を電子レンジで温め、レトルトカレーをかけたカレーライス。朝食を食べた後、6時頃自宅を出る予定で準備をしていたが、この時期はまだ日の出前で、結局自宅を出たのは7時すぎ。まあ、ベリーズ動物園は、9時からしか開いていないので、早く行っても仕方がないと思いつつ、のんびり走りはじめる。 |
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お馴染みの通勤路を通って、霧につつまれた国会議事堂や、ノベロス・バスターミナルを右手に見ながら走る。バスターミナル周辺のお店はすでにいくつか開いている。ハミングバードハイウエイに出た所を右手に曲がり、1km程行くとウェスタンハイウエイにぶつかる。 ちょっと手前に、ベルモパンの入り口の看板があり、人口7,100人との記述がある。今は、8千人とも聞くが、いずれにせよ、大陸にある国の首都で、これだけ人口が少ないのは、特筆すべきだろう。 T字路の左側には、ベリーズ最大のイベントと言われる、アグリカルチャー・トレードショウのための土地がある。この土地は年一回行われるそのイベントのためにつねに確保され、他のことに使われることはほとんど無いという。T字路の正面は、グアナカステ国立公園があるが、まだ入ったことはない。自宅から近いのでいつでも行けると思っているので、このありさまだ。 T字路を右折しウェスタン・ハイウェイに入り、ベリーズ・シティー方向を目指す。少々行くと、右側が開けてエアー・ストリップ(滑走路)が見えてきた。珍しくプロペラ機が止まっているので、写真を撮る。エアー・ストリップを過ぎると、右手に白い碑がある。これは以前よりバスの中から見て気になっていたのだが、書かれている文字を読んでも、何を記念した物かは不明である。滑走路の建設を実施したベリーズ人を英国人が讃えた物なのだろうか。 |
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これもバスの中から気になっていた物だが、右側に大きな木がぽつりと立っている。不思議なことに木の幹には韓国の国旗が刺さっていた。韓国人所有の土地の入り口なのだろうか。 道が直線になり、ここまで来てやっと今回持参した1/5万分の1の地図のエリアに入った。地図に期された次の集落である、コットン・ツリーを目指して走っていると程なく集落が現れた。バスでは乗降する人が居なければ一瞬で通り過ぎてしまう規模の村だが、自転車でのんびり村を見ながら走ると、人々の生活感が伝わってくる。最初バスの中から見たときはなんと貧しい建物ばかりだと驚いた物だが、奥の方を見るといろいろな建物があり、質素ながらも、普通の生活を送るには足りる、一通りの物が揃っているなと感じる。 |
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この付近は、ひたすら直線的に東西に横切るウェスタン・ハイウェイを走っていることもあり、集落や、目印となる横道でもないと、いったい地図上のどの位置まで来たのかの確認がしにくいが、川を横切る橋である、ビーバー・ダム・ブリッジに到着したので、はっきりと現在位置の確認ができた。ここで、小休止し、写真など撮影する。 後で聞いた話だが、同じく日本人ボランティアのW氏の同僚のベリーズ人のS氏が職場の人の車でここを通り過ぎたとき、私を見かけたとのことだ。交通量はさほど多くないが、少ない人口で、休日ともなるとベリーズ・シティーへ出かける人もいるので、知っている人が通りかかるだろうなとは思っていたが、やっぱりである。 |
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大したことはないが、少々長めの登りが続いたと思ったら、見晴らしの良い丘の上に出た。左手には、まだ植えられてから間が無く、収穫などできるレベルではないと思われるオレンジの木が、広大な土地に整然と植えられているのが見える。さて、この木からオレンジが収穫できるようになるのは何年先になるのだろうか。 快調に丘を下って行くと、ベリーズ・シティーへの間の一番大きな交差点、ラ・デルモクラシアまで来た。ここには、大きなバス停と、この付近では比較的大きい建物や、ガソリンスタンドがある。ここから、右に入ると、ゲールス・ポイント近くを通り、ダングリガの町に行くことができる。しかし、このルートは完全に未舗装なので、通常ダングリガに行く場合は、ベルモパン経由でハミングバードハイウェイを使う。バスもそっちのルートのみだ。以前、ゲールス・ポイントに行ったことがあり、タクシーでこのルートを利用したことがあるが、雨が強く降ると通行ができなくなり、帰りはダングリガを経由で帰ったのだった。 |
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ダングリガへの道とのT字路を過ぎてすぐに、また橋を渡る。小さな橋であるが、橋の名前が付いていて、他には目印が少ないので、地図上で位置の確認ができる。「Colonel」とは、「大佐」のような軍人の位の事を言うようなので、「English」は人の名前なのだろうか。 |
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橋を過ぎてすぐにベリーズ動物園の入り口が見えてきた。今回のサイクリングのメインの観光地だ。今日の行程の半分は来ていないが、位置的には良い休憩ポイントでもある。 看板を見ると、8:30からオープンしていたようだ。ハイウェイから入り口だけを見ると、貧弱な看板とゲートがあるだけで、ちゃんとした建物があるようには見えなかったが、中に入って行くと、しっかりとした建物があった。その入り口に自転車を止めて、入場することにする。チケット売り場で、$15と言われたので、ベリーズに住んでいると告げ、IDカードを見せると、地元人料金の$3.50になった。 もらった園内の地図を片手に順番に沿って歩き出すと、最初にいたのは鹿である。そもそも、この場所自体が自然の森の中に作られていて、大げさな檻は少なく、最低限逃げ出さない程度のロープや柵がある程度で、とても雰囲気がよい。 最初の鹿とクモザルをじっくり見て、入り口付近に戻ってくると、東洋人のご夫婦が私の前を歩いていった。その後ろから、高齢のご夫婦が歩いてきた。彼らの会話を聞いていると日本人のようだ。面識のない日本人観光客を見るのはベリーズに来て初めてなので、声をかけると、前の2人とも家族らしく、一緒に旅をしているとのこと。グアテマラとの国境に近い町、ベンケのリゾートホテルに泊まっているらしく、そこでも日本人は初めてだと言われたそうだ。よく考えたら日本は今、年末年始休暇。彼らの後を追いながら、ゆっくり動物を一つ一つ見て行く。 ほとんどの動物が間近に見えるので、一つづつゆっくり見てしまう。木の上でホエザルの赤ちゃんを抱く母ザルや、数ある鳥類の中で、国鳥のトゥカン(オオハシ)も間近に見ることができたし、ちょっと離れているが、ジャガーが寝ているのも見える。この分だと見学時間は1時間では済まないな。などと思っていると、何処かで聞き覚えのある声がした。ボランティアのコーディネーターのM氏が家族で来ていた。偶然ではなく、私がここに来るというので、それに合わせて来たようだ。彼らはここに来るのは3度目で、何度来てもも飽きないとのことだがその通りだろう。ビデオカメラを持ってきたので、私のサイクリングしている様子を撮影してくれるという。ソロ・ツーリングの走行場面のビデオ撮影は簡単にできないことなので、是非とこちらからお願いすることになった。 ほとんどスチル写真ばかり撮影している私のビデオカメラは、充実した動物のためにバッテリーがほとんどない。予備のバッテリーを持って来なかったことを悔やんでいたら、M氏の奥様のデジタルカメラが偶然同じバッテリーだったので、お借りしてこれからの道中のビデオや写真を撮ることにした。 |
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| 25マイルのお店で買ったカレールウと、昼食のちまき |
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動物園の建物の前で写真を撮ってもらい、先に出るM氏の車を見送った後、動物園を出ると、なにやら右足の調子が悪い。動物園に到着するまではなんでもなかったのに、動物園で歩いているうちに、痛くなったようだ。それでも、そもそもゆっくりペースであるし、大した痛みでもなかったので、そのまま走っていると、前方にM氏の車が見えてきた。ビデオを取ってくれている。そのまま通り過ぎてから、止まって、少々話をして別れる。 昼食は、今日のルートの中間地点である25マイルという台湾人の移民のコロニーがある場所で取る予定だ。右足の痛みが増したような気がするが、もう少しで25マイルだと思い走り続けていると、左側にコロニーが見えてきた。ベリーズではここでしか売っていないカレーのルーを購入したかったので、ショッピングセンターに入る。ここは何度か車で移動中に寄ったことがあるが、バスでの移動では気軽に寄ることはできない。カレールー2種類と、他では見ない台湾人が作っているのか、漢字の名前の付いたアイスクリームを購入して、店の前のベンチで昼食とする。自宅から用意してきた昼食は、職場の近くで売っている、中華ちまきと、オレンジジュースだ。 昼食を終えた頃、見たことのある車が、ウエスタンハイウェイから、台湾コロニーに入ってきた。先ほど別れたコーディネーターのM氏の車である。ちょうど買い物に寄ったとのことで、休憩がてら話をする。 |
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台湾コロニーでの昼食休憩を終え、いよいよ後半の始まりである。足の痛みは回復していないようだ。こいでいなければどうと言うこともない痛みなので、久しぶりに長時間ペダルを踏んだための痛みだろう。以前も長期サイクリングの初日からがんばると、筋肉痛ではなく、まるで骨折でもしているのではないかという痛みを伴うことがあった。まあ、今日は時間もあるし、本当に駄目なら頻繁に走っているバスに乗ればよいだけのことだと気軽に考え、時速18km程度の、のんびりしたペースで走る。 前方に集落が見えてきた。道中にある最大の集落であるハッティビルが近くなってきたのかと思ったが、行ってみると小さな集落だ。そんなことを2,3回くり返し、やっとハティビルに到着した。ここからベリーズ・シティーまでは20kmぐらいなので、ここで大休止を決め込み、警察署の近くの歩道の縁石に腰掛け、地図を入れ換えたり、水を飲んだりする。後で聞いた話だが、ここでも他のボランティアの職場の同僚が、私のことを通り過ぎる車から見たとのこと。他にも私を見かけた私の知人が何人もいることだろう。 10分ほど休憩してハティビルを出発しようとしたら、歩道で遊んでいる子供がいた。良く見るとラジオ・コントロールの車を走らせている。この手のものは、私の子供の頃と違い、今ではそれほど高価ではないのかもしれないが、ここが本当に途上国なのかと目を疑う光景だった。これが、首都やベリーズ・シティーにある高級住宅街の路地なら不思議ではないが、ここは村である。やっぱり、見た目よりも、実際は良い暮らしをしているのだと納得してしまった。TVゲーム機も当たり前なのだろう。 |
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ハティビルを出てからもう少しだと思い、つい力が入ったのか、右足の痛みが増してきた。そして、前方に黒い雲が見えてきて、だんだん近寄ってくると同時に、小雨が降ってきた。前方の空の黒さに比べると、雨の量はかなり少なく、何も対応することなくやり過ごすことができたが、そこからずっと走って行くと、今度は本格的な雨に直撃された。バッグの中からザックカバーをとりだし、バッグだけを雨から守って、そのまま走り続けると、ちょっと行ったところの左側にマングローブが見えてきた。いつもバスから見ている風景だが、止まってじっくり写真を撮ることは当然できないので、これを機会に写真を撮る。雨が降っているのにお構いなしだ。 川沿いの直線ルート沿いにある大きめの集落を過ぎ、ベリーズ・シティーに入ったことを告げる看板を過ぎると、これもバスからのお馴染みの景色である運河を横切る橋を渡る。川ではないので、水の流れはほとんどなく、水面はとても静かである。釣りをしている人もいる。 |
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運河を渡り、大きく左にカーブしてまっすぐベリーズ・シティーに向かう。地図で見るとちょっと離れたところを運河が平行して流れている。右側を遠望すると、カリブ海が近くなってきていることがわかる。ベリーズ・シティーは半島のようにカリブ海に突きだしているので、その手前でウエスタンハイウェイはカリブ海に近いところを走るのだ。ふと右手を見ると小さな看板があり、ベリージアン・ビーチと書いてある。この辺でビーチがあるという話は聞いたことはないが、海はすぐ近く、まだ日没には時間があるので、右に折れて見に行ってみることにする。 未舗装の道を入って行くと、数百メートルで海沿いに出たが、とてもビーチという雰囲気ではない。ただ、砂地には、茅葺きの屋根の突いたベンチが沢山並んでいて、シーズンにでもなれば、なにか人を引きつけることでも起きるのかと、想像を巡らす程度だ。 |
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ベリージアン・ビーチから、ウエスタン・ハイウェイに戻り10分ほど走ると、ベリーズ・シティーの町が見えてきた。そして、ベリーズ・シティーに入ったことを実感させるのが、大きな墓地。たまに葬式をやっているが、今日も人が集まっていて葬式のようだ。そこを過ぎると、ランナバウトがある大きな通りにぶつかる。この通りは、セントラル・アメリカ・ブルバードという道路で、ベリーズ・シティーの外周道路という感じの立派な道路だ。ランナバウトを左りに折れ、この外周道路をひたすら北上する。 |
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さすがに、ベリーズ最大の都市だけあり、たまに信号がある。一度、赤信号で止められ、5分ほど走り、カナダの援助で作られたというベルキャン橋を越えると、今度は、ベリーズの北部への主要道、ノーザン・ハイウェイとの交差点にあるランナバウトが見えてきた。ベリーズ国内で最大だと思われるこのランナバウトには、カリコム(カリブ共同体)参加国の国旗が並んではためいており、通称「フラッグス」と呼ばれている、ベリーズシ・ティーのシンボルでもある。 |
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フラッグスをぐるっと回り、同じ方向に走って行くと、道は、プリンセス・マーガレット・ドライブと名を変える。大きな病院を過ぎ、セント・ジョンズ大学にさしかかる手前で道は大きく右手にカーブして、高級住宅地に入って行く。クリスマス直後と言うこともあり、お屋敷の飾り付けはまだ外されておらず、華やかなものだ。 高級住宅地を抜けると道は海に出る。ここから事務所のあるビルはすぐだ。結局、足が痛くて、遅くとも5時までには事務所に着けるだろうと思っていたその5時になってしまった。荷物を外して、自転車を畳んで、エレベーターで上がり、事務所のドアをノックすると、同じくボランティアのO氏がドアを開けてくれた。Y氏も来ているとのことだ。 右足は痛いが、歩く分にはそれほど支障はないし、体全体は、長い時間走った割には全然疲れていない。足が痛い分、のんびりペースになったからだろうか。スポーツ車だとスピードも出て、前傾の姿勢で自転車をこぐこともあり、それなりに全身が疲れるが、この自転車はそうではなく、疲れが比較的出ない自転車だ。 早速、シャワーを浴びて、汗を流す。風呂に入りたかったが、お湯を使い切ってしまったらしく、一年の垢を落とす楽しみは、食事の後に取っておくことにする。 外は少々雨が降り始めたようだが、O氏とY氏と3人で、近くのインド料理の店に行くことにする。この店は何度か来ているが、日本で食べるインド料理と比べても美味しいカレーが食べられる。少々日本的なカレーである様な気もする。2種類ほどカレーを頼んで、サモサと、各自飲み物を頼んで、全部で$50ちょっと。私が$30を出して、食事を終える。事務所に戻る途中、隣の公園にあるお店で飲み物を買う。 事務所に戻って、日本のアイドルグループの出演するバラエティー番組のビデオを次々に見ながら、日本を懐かしむ。お湯が復活したので、本格的に風呂に浸かり、1時頃ベッドに転がり込む。 |